著者
松野 年美 針口 二三男 岡本 勉
出版者
社団法人日本獣医学会
雑誌
日本獣医学雑誌 (ISSN:09167250)
巻号頁・発行日
vol.53, no.1, pp.p13-17, 1991-02
被引用文献数
1

古典的な抗マラリア剤パマキンおよびプリマキンなどの8-aminoquinolineの抗コクシジウム活性については, 未だに報告されていない. それら2薬剤につきバタリー試験により, 5種のニワトリコクシジウム : Eimeria tenella, E. necatrix, E. acervulina, E. maxima, およびE. brunetti (いずれも実験室標準株) に対する活性を調べた. 両薬剤は共にE. tenella, E. necatrixに対してのみ有効で, その他のコクシジウムに対しては, 全く無効であった. 前2者に対する有効性については, E. tenellaに対してパマキンは, 飼料中125-250ppmの投与により顕著に症状を抑制する効果を示し, プリマキンは31.2ppm以上の投与で一層優れた抑制効果を発揮したほか, E. necatrixに対しては, パマキンは250ppmで, プリマキンは125ppm以上の濃度で症状の抑制効果を発揮した. これらの試験でパマキンは125-250ppmの濃度で明らかにヒナの増体重を抑制する傾向を示したが, プリマキンは, 500ppm投与の例を除き250ppmまでの濃度ではそのような傾向を示さなかった. また, パマキンのbenzophenone, nitropyrazole, dinitrobenzoie acid, quinoline類との分子化合物ならびに硫酸塩, 亜鉛塩などにつき同様のバタリー試験を行ったところ, それらの化合物はパマキン自身が示した抗コクシジウム活性を失うことなく, 体重増を低下させる影響を著しく軽度なものとし, 広い安全域を示した. 本来強い抗マラリア・抗ピロプラズマ作用のある8-aminoquinoline類に対して感受性を示したE. tenellaやE. necatrixは, 生活環に上皮細胞寄生のほか特に中はい葉由来細胞に寄生する時期を持つという意味でマラリアやピロプラズマのような住血原虫の生活態度に似ており, 他の3種の感受性を示さなかったEimeriaとは異なっている. 本試験結果はこれら8-aminoquimoline感受性の胞子虫の間には生理機構の中に互いに類似した要素のあることを示唆しているのかもしれない.