著者
岡本 絵莉
出版者
東京大学
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2015

本研究の目的は、日本の研究型大学における研究コミュニティの多様性に着目したモデル化とそれぞれのモデルに即した支援策の提示である。具体的な成果として、多様なコミュニティに関するケース教材の作成を目指して研究を実施した。本研究の社会的背景としては、大学における研究支援(Research Administration)の重要性が高まっていることがある。日本の研究型大学は、最先端の研究活動だけでなく、それにもとづく教育、社会貢献など、時には相反するように見える多様なミッションを担っている。これらの実質的な担い手は、多様な研究コミュニティである。本研究では、この研究コミュニティという単位に着目し、その多様性を踏まえた支援策として、ケース教材の作成を目指した。本研究の方法としては、主に教育学の分野で発展してきたコミュニティ理論にもとづき、大学の研究コミュニティに対するインタビュー調査を企画・実施した。主な調査対象となった工学系分野の大学研究室に関しては、過去に研究代表者が実施した質問紙調査のデータを再分析し、活用した。具体的なインタビュー調査は、再抽出した研究室に依頼し、それぞれの構成員(教員・学生)に対して、それぞれ30分~1時間実施した。実施したインタビュー調査を通じて、研究コミュニティを規定する要因(分野、資金、強調されるミッション、構成員の特性、存続期間等)が明らかになった。また、経営学の分野で実務者の教育目的で作成・活用されてきたケース教材の完成に向けて、必要な質的データを取得することができた。
著者
北村 智 岡本 絵莉
出版者
日本教育工学会
雑誌
日本教育工学会論文誌 (ISSN:13498290)
巻号頁・発行日
vol.34, no.2, pp.95-103, 2010
参考文献数
20
被引用文献数
2

本研究の目的は工学系大学院生の研究室教育に対する満足度および成長の自己評価と研究業績の関係を検討することである.本研究では工学系研究室に対する層化無作為抽出による質問紙調査を実施し,73研究室からデータを収集した.本研究でのデータは学生レベルと研究室レベルを含む階層的データであるため,学生レベルのモデルと研究室レベルのモデルに分けて相関係数を算出した.分析の結果,次の2点が示唆された.(1)研究室レベルで修士課程大学院生に査読有りの研究発表を求めていくことと,学生の学術コミュニケーション能力との間にはポジティブな関係がある一方で,満足度との間にはネガティブな関係がある,(2)修士課程大学院生に自分が第1著者となる研究以外の共同研究にも参画させていくことと,学生の満足度や成長の自己評価の間に研究室レベルでみてポジティブな関係がある.