- 著者
-
岡沢 亮
- 出版者
- 日本社会学会
- 雑誌
- 社会学評論 (ISSN:00215414)
- 巻号頁・発行日
- vol.72, no.4, pp.540-556, 2022 (Released:2023-03-31)
- 参考文献数
- 31
本稿の目的は,テクストデータを用いるエスノメソドロジーの方針と取り組むべき課題をめぐる方法論的議論を進展させることである.まずテクストのエスノメソドロジーの基本方針が,テクストを社会現象の表象として扱うのではなく,テクストにおいていかなる活動がいかなる概念連関に依拠して行われているのかを分析することだと述べる.次に,テクストを分析する際の資源としての受け手の反応(の不在)をめぐり会話分析から寄せられた批判に応答し,テクストの分析可能性を擁護する.その上で,Goffman の参与枠組のアイデアとそれに対する会話分析の批判的検討を参照し,書き手と読み手がテクストをめぐる参与枠組を形成する方法を解明することが興味深い課題になると論じる.またその課題に取り組むにあたり,テクストを書く/読む実践の制約かつ資源となるインターフェイスへの着目の重要性を主張する.以上を踏まえ,ウェブ上の映画作品レビューとそれに付されたコメントの具体的分析を行うことにより,テクストの参与枠組を形成する方法の分析が当のテクストの活動としての理解可能性の解明に資すること,そしてその分析においてテクストを書く/読む際のインターフェイスへの着目が有効であることを例証する.最後に,本稿の議論がエスノメソドロジーと会話分析の関係の再考や,テクストデータを用いる社会学一般をめぐる方法論的議論に寄与することを示唆する.