著者
本間 洋州 高橋 昌稔 兒玉 直樹 岡田 和将 足立 弘明
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.734-739, 2018 (Released:2018-12-01)
参考文献数
9

反復するげっぷと腹部膨満感を主訴とする27歳男性患者に対して, 各種身体検査にて器質的な消化管疾患を除外し, RomeⅢ基準に基づいて空気嚥下症と診断した. 一般的治療に対して反応性に乏しく, 職場不適応といった心理社会的背景をもつ症例と考えられたので, 生物心理社会的な治療アプローチを試みた. 生物学的観点からは, 空気嚥下の動画や腹部X線写真での腸管ガス像の変化といった生物学的変化を明示して病態理解を促した. 心理的観点からは, 失感情症傾向に対して受容的に関わりながら感情表出を促すとともに, 過剰適応傾向に対して自分の趣味に時間を割くことの重要性を説明して行動変容を促した. 社会的観点からは, 患者の知能特性として処理速度が有意に低いことに基づき職場における環境調整を行った. このような多角的治療アプローチを有機的に組み合わせることで, 難治性消化管症状の改善につながった空気嚥下症症例を経験したので報告する.
著者
本間 洋州 高橋 昌稔 兒玉 直樹 岡田 和将 足立 弘明
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.734-739, 2018

<p>反復するげっぷと腹部膨満感を主訴とする27歳男性患者に対して, 各種身体検査にて器質的な消化管疾患を除外し, RomeⅢ基準に基づいて空気嚥下症と診断した. 一般的治療に対して反応性に乏しく, 職場不適応といった心理社会的背景をもつ症例と考えられたので, 生物心理社会的な治療アプローチを試みた. 生物学的観点からは, 空気嚥下の動画や腹部X線写真での腸管ガス像の変化といった生物学的変化を明示して病態理解を促した. 心理的観点からは, 失感情症傾向に対して受容的に関わりながら感情表出を促すとともに, 過剰適応傾向に対して自分の趣味に時間を割くことの重要性を説明して行動変容を促した. 社会的観点からは, 患者の知能特性として処理速度が有意に低いことに基づき職場における環境調整を行った. このような多角的治療アプローチを有機的に組み合わせることで, 難治性消化管症状の改善につながった空気嚥下症症例を経験したので報告する.</p>
著者
岡田 和将 山下 優毅 辻 貞俊
出版者
産業医科大学学会
雑誌
産業医科大学雑誌 (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.28, no.3, pp.265-275, 2006-09-01

てんかん患者や種々のてんかんモデル動物において脳内のサイトカインやcyclooxygenase (COX)-2が増加していることが報告されている.本研究では,テレピン油投与で誘導した炎症反応がおよぼす遺伝性てんかん(E1)マウスのてんかん現象に対する影響を検討した.てんかん発作のパラメーターとして発作誘発閾値(痙攣誘発に必要な抛り上げ回数),痙攣持続時間,痙攣後意識混濁時間(痙攣終了から完全に回復するまでの時間)を解析した.また脳内のinterleukin (IL)-1β, IL-6, COX-2のmRNAをRT-PCR法で解析した.IL-1β, IL-6, COX-2のmRNA発現はてんかん発作前と発作24時間後で変化はなかったが,テレピン油投与24時間後には全て増加した.テレピン油投与24時間後に発作を誘発した場合,痙攣後意識混濁時間は投与前と比較して有意に延長した.発作誘発閾値と痙攣持続時間には有意差はなかった.痙攣後意識混濁時間の延長はインドメタシンの前投与により抑制されたが,インドメタシン投与はIL-1β, IL-6, COX-2のmRNA発現には影響しなかった.これらの結果からE1マウスのてんかん現象において,COX-2によって誘導されるプロスタグランデインは痙攣後意識混濁時間の維持に重要であることが推測される.