著者
安田 千春 武井 嵩展 魚住 武則 豊田 知子 由比 友顕 足立 弘明
出版者
日本神経学会
雑誌
臨床神経学 (ISSN:0009918X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.600-604, 2016 (Released:2016-09-29)
参考文献数
14
被引用文献数
1 2

症例は67歳女性.家族歴なし.2009年より進行性の脊椎側弯が出現し2013年他院で体幹ジストニアの診断でトリヘキシフェニジル内服とボツリヌス注射が行われたが改善はなく,2015年に歩行障害が出現した.同年5月当科での[123I]-イオフルパンシンチグラフィー(以後DATスキャン)で異常をみとめ,6月当科入院時は運動緩慢,筋強剛,右優位の静止時振戦,姿勢反射障害をみとめ頭部MRIで異常なくレボドパで運動症状の改善をみとめたことからパーキンソン病と診断した.本例は体幹ジストニアが先行したパーキソニズムでありDATスキャンが診断の一助となりえた症例である.貴重な症例であり文献的考察を加え報告する.
著者
黄 哲 足立 弘明
出版者
The University of Occupational and Environmental Health, Japan
雑誌
Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
巻号頁・発行日
vol.38, no.2, pp.139-148, 2016-06-01 (Released:2016-06-14)
参考文献数
43
被引用文献数
8 9

神経変性疾患はその発症メカニズムがいまだ明確にされていない難治性疾患の一群である.罹患率は高く根本的な病態抑止治療法が確立されていない.神経変性疾患における形態学的病変では,病因となる蛋白質が神経細胞内で異常な凝集体を形成して蓄積しており,それらが細胞毒性を発揮して神経細胞死に至ると考えられている.オートファジーは,細胞内でこれらの異常蛋白質を分解するシステムとして重要な役割を果たしており,神経変性疾患の発病に強く関わっていることが知られている.従って,オートファジーは神経変性疾患の新しい治療ターゲットになっており,植物由来の天然化合物によるオートファジー活性化機構およびその機序に基づいた神経変性疾患の治療法開発研究が盛んに行われている.本稿では,アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病,球脊髄性筋萎縮症,脊髄小脳変性症3型,筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患について,オートファジー経路を活性化する作用のある天然化合物を用いた治療法の開発に関して概説する.
著者
本間 洋州 高橋 昌稔 兒玉 直樹 岡田 和将 足立 弘明
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.734-739, 2018 (Released:2018-12-01)
参考文献数
9

反復するげっぷと腹部膨満感を主訴とする27歳男性患者に対して, 各種身体検査にて器質的な消化管疾患を除外し, RomeⅢ基準に基づいて空気嚥下症と診断した. 一般的治療に対して反応性に乏しく, 職場不適応といった心理社会的背景をもつ症例と考えられたので, 生物心理社会的な治療アプローチを試みた. 生物学的観点からは, 空気嚥下の動画や腹部X線写真での腸管ガス像の変化といった生物学的変化を明示して病態理解を促した. 心理的観点からは, 失感情症傾向に対して受容的に関わりながら感情表出を促すとともに, 過剰適応傾向に対して自分の趣味に時間を割くことの重要性を説明して行動変容を促した. 社会的観点からは, 患者の知能特性として処理速度が有意に低いことに基づき職場における環境調整を行った. このような多角的治療アプローチを有機的に組み合わせることで, 難治性消化管症状の改善につながった空気嚥下症症例を経験したので報告する.
著者
本間 洋州 高橋 昌稔 兒玉 直樹 岡田 和将 足立 弘明
出版者
一般社団法人 日本心身医学会
雑誌
心身医学 (ISSN:03850307)
巻号頁・発行日
vol.58, no.8, pp.734-739, 2018

<p>反復するげっぷと腹部膨満感を主訴とする27歳男性患者に対して, 各種身体検査にて器質的な消化管疾患を除外し, RomeⅢ基準に基づいて空気嚥下症と診断した. 一般的治療に対して反応性に乏しく, 職場不適応といった心理社会的背景をもつ症例と考えられたので, 生物心理社会的な治療アプローチを試みた. 生物学的観点からは, 空気嚥下の動画や腹部X線写真での腸管ガス像の変化といった生物学的変化を明示して病態理解を促した. 心理的観点からは, 失感情症傾向に対して受容的に関わりながら感情表出を促すとともに, 過剰適応傾向に対して自分の趣味に時間を割くことの重要性を説明して行動変容を促した. 社会的観点からは, 患者の知能特性として処理速度が有意に低いことに基づき職場における環境調整を行った. このような多角的治療アプローチを有機的に組み合わせることで, 難治性消化管症状の改善につながった空気嚥下症症例を経験したので報告する.</p>