- 著者
-
黄 哲
足立 弘明
- 出版者
- The University of Occupational and Environmental Health, Japan
- 雑誌
- Journal of UOEH (ISSN:0387821X)
- 巻号頁・発行日
- vol.38, no.2, pp.139-148, 2016-06-01 (Released:2016-06-14)
- 参考文献数
- 43
- 被引用文献数
-
8
9
神経変性疾患はその発症メカニズムがいまだ明確にされていない難治性疾患の一群である.罹患率は高く根本的な病態抑止治療法が確立されていない.神経変性疾患における形態学的病変では,病因となる蛋白質が神経細胞内で異常な凝集体を形成して蓄積しており,それらが細胞毒性を発揮して神経細胞死に至ると考えられている.オートファジーは,細胞内でこれらの異常蛋白質を分解するシステムとして重要な役割を果たしており,神経変性疾患の発病に強く関わっていることが知られている.従って,オートファジーは神経変性疾患の新しい治療ターゲットになっており,植物由来の天然化合物によるオートファジー活性化機構およびその機序に基づいた神経変性疾患の治療法開発研究が盛んに行われている.本稿では,アルツハイマー病,パーキンソン病,ハンチントン病,球脊髄性筋萎縮症,脊髄小脳変性症3型,筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患について,オートファジー経路を活性化する作用のある天然化合物を用いた治療法の開発に関して概説する.