著者
清水 祐美 岡田 実紀 片桐 孝夫
出版者
The Japan Society of Home Economics
雑誌
一般社団法人日本家政学会研究発表要旨集
巻号頁・発行日
pp.180, 2012 (Released:2013-09-18)

目的:天ぷらは高温の油で揚げることにより衣の脱水と吸油が起こり、サクサクとした食感が生じる。一般的にサクサクとしたおいしい天ぷらを作成する際、冷水を使用すること、衣を攪拌しすぎないことなどが知られているが、非常に難しい。そこで、本研究では、衣を調製する際にレモン果汁を添加することで衣の物性に与える影響について評価し、おいしい天ぷらの調理方法の可能性について検討した。 方法:天ぷらの衣は、小麦粉:調味液を1:1.5の割合で調製し、180℃で揚げた。調味液は、13%レモン果汁、もしくはコントロールとして水を使用し、両者の物性等に与える影響の比較を行なった。衣の状態を比較するため、生衣での衣の付着量と、揚げ衣での水分量、吸油量、物性の測定、官能評価を行った。付着量はシリコンゴムに付着した衣の量を測定した。水分量は常圧乾燥法により、吸油量はクロロホルム・メタノール混液抽出法により測定した。物性は、テクスチャーアナライザーを用い、揚げ衣が破断されるまでの間のピーク回数を測定し、食感(サクサク感)の評価を行った。 結果及び考察:天ぷら衣の付着量の結果より、レモン群はコントロール群より少なく生衣の粘りが少なかった。揚げ衣においては、レモン群はコントロール群に比べ、水分が少なく、油量が多い傾向にあった。テクスチャーアナライザー、および官能評価の結果より、レモン群は、衣のサクサク感も高かった。以上の結果から、天ぷら衣を調製する際にレモン果汁を添加することで、含まれるクエン酸により、小麦粉のグルテン形成が阻害され、揚げた際にサクサクとした食感の天ぷらを作成することができると考えられる。