著者
山本 好和 熊沢 敦子 坂田 佳子 木下 靖浩 片山 明
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蠶絲學雜誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.27-31, 2002-04-30
参考文献数
8
被引用文献数
2

マダガスカル島原産の観賞用植物であるハナキリンを組織培養することによって生産された単一のアントシアニン (シアニジン-3-アラビノシド) で, アニオン化された絹を染色した。被染素材としてアニオン化された絹を用いることで, 鮮やかな赤色を呈するフラビリウムカチオンが濃着染色されること, およびカチオン色素が繊維中で安定化することを明らかにした。また, フラビリウムカチオンが染色したアニオン化絹に対する種々の金属塩による後媒染および耐光性への影響を調べた。
著者
川瀬 茂実 橋本 義文 中垣 雅雄
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.49, no.6, pp.477-484, 1980

軟化病ウイルス (坂城株) を精製純化し, その核酸, たんぱく質の諸性状を調査した結果, 以下の点が明らかとなった。<br>1) 本ウイルスの核酸は単鎖RNAで, ウイルスRNAのS値は33S, 分子量は2.4×10<sup>6</sup>ダルトン, ウイルスのRNA含有率は28.5%であった。<br>2) 本ウイルスの構成たんぱく質は4種類確認され, それらの分子量はそれぞれ約31,000~32,000 (VP1), 41,000~42,000 (VP2), 49,000 (VP3), および68,000~69,000 (VP4) で, VP1が全たんぱく質の約70%を占める主要たんぱく質であった。<br>3) 以上の結果より, 軟化病ウイルス (坂城株) はピコルナウイルスに属するウイルスで, そのクリプトグラムは〔R/1:2.4/29:S/S:I/O〕と決定した。
著者
ウイライ サン 須貝 悦治 黄色 俊一
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.265-270, 1990

末期の雌蛹を高温密閉条件で処理し, 羽化後これに正常雄を交配すると, 産下卵の多くが不着色死卵となるが, 十分な空気の供給下では不着色死卵は殆んど発現しない。蛹1頭当りの空気容量が9ml又は20mlの場合には, 35℃で12時間処理すると100%が不着色死卵となった。また, 空気容量を58mlにすると, 不着色死卵の発現はかなり遅れ, 18時間処理で100%となった。このような不着色死卵の多くは正常精子と受精はするが, 核分裂の初期段階で致死し, 胚盤葉形成まで発育しているものはなかった。これに対し, 処理区に混在する着色卵では, 多くのものが孵化能力を有し, 次代への遺伝的影響は認められなかった。
著者
小片 真弓 山田 弘生 深田 哲夫 代田 稔
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.46, no.5, pp.427-432, 1977

1. 有機物を炭素源として大量培養したクロレラを蚕の人工飼料の成分として用いる可能性を検討するために先ず蟻蚕の摂食行動に対する影響をしらべた。<br>2. 寒天ゲル10mlに桑葉粉末1.2gを含ませた飼料を基本とし, この桑葉粉末の一部をクロレラでおきかえたものに蟻蚕を掃立て24時間後の排糞数を求めた。対照区としてクロレラのかわりに同重量のセルロース粉末を含むものを用いた。<br>3. クロレラを含む飼料に対する排糞数はセルロース粉末を含んだものよりも常に少なく, クロレラには蟻蚕の摂食に対する阻害因子の存在することが推定された。<br>4. クロレラ中の摂食阻害因子はクロレラをメタノール抽出することによって一部とりのぞけること及びクロレラの蛋白質区分を用いれば阻害効果が少ないことが判った。<br>5. 実用蚕品種の間にクロレラ中の摂食阻害因子に対する感受性の差のあることが判った。<br>6. 桑葉粉末50%+クロレラ50%の人工飼料に対する蟻蚕の摂食は在来の大豆配合飼料の場合にくらべておとらないことがわかった。これはクロレラを人工飼料の蛋白源として使用する可能性を示している。
著者
山田 弘生 小片 真弓 深田 哲夫 高橋 利〓 代田 稔
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.47, no.6, pp.490-500, 1978

1. クロレラと桑葉粉末を各々50%配合した人工飼料を調製し, 蚕の全齢飼育を試みて在来の大豆配合人工飼料に劣らない成績を得た。<br>2. 本クロレラ配合飼料をミルクカゼイン配合人工飼料と比較することにより, クロレラには蛋白質及び炭水化物以外に蚕の生育に有効な因子のある事が推定された。<br>3. 蚕の飼育経過, 繭質及び収繭率に於いて, 良好な成績を与えるクロレラの配合率は40~70%である事が判った。<br>4. クロレラ配合人工飼料で蚕を飼育する場合, 飼育温度は28~30℃が最適である事が判った。<br>5. 壮蚕期には本飼料中の桑葉粉末を25%にまで減量し, その分をミルクカゼイン・スターチ・セルロース混合物または脱脂大豆で補っても良い事が判った。<br>6. 50%クロレラ配合人工飼料で1,100頭の蚕を全齢飼育してみたところ, 生糸量歩合14.61%の3等格に相当する繭が対掃立89%得られた。また14,000頭の全齢育でもほぼ同様の成績であった。<br>7. 春蚕期に20,000頭の蚕を1~3齢クロレラ配合人工飼料育し, その後農家で4~5齢桑葉育を行ったところ, 全齢桑葉育に近い成績を得た。
著者
呉 福泉 Lavina Barbara A. 池田 素子 白田 典子 蔡 月仙 藩 少茜 小林 迪弘
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蠶絲學雜誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.69, no.3, pp.177-189, 2000-06-30
参考文献数
32
被引用文献数
5

中国でシロイチモンジヨトウ幼虫から分離したSeNPVを, Se301細胞を用いたプラークアッセイによりクローニングし, 15のクローン (G1-G15と命名) を得た。これらのクローンは, 変異体であると考えられる3種のクローン群 (G1, G3, およびG4群) に分類できた。G3は, G1とG4に比べて, Se301細胞での出芽ウイルス産生量など生物学的活性が高い傾向にあった。これらのクローンのBmN-4, IPLB-Ld652Y, Sf9, FRI-SpIm1229, TUAT-SpLi221およびCLS-79の各細胞における感染性を調べたところ, いずれもSf9細胞でBVと多角体を産生したが, Se301細胞での産生量より少なかった。FRI-SpIm1229細胞では, 有意なBV産生はなかったが, 多量のウイルスDNAが産生され, 少量ではあるが多角体とポリヘドリンが産生された。また, SeNPV感染FRI-SpIm1229細胞とLd652Y細胞ではアポトーシス様の形態を示す細胞が認められた。TUAT-SpLi221とCLS-79細胞では明らかな細胞病変効果は認められなかった。
著者
野口 洋子
出版者
日本蠶絲學會
巻号頁・発行日
vol.60, no.4, pp.302-309, 1991 (Released:2011-03-05)
著者
羽賀 篤信 張 敏
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蠶絲學雜誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.67, no.1, pp.17-21, 1998-02-27
参考文献数
10
被引用文献数
2

蚕の蛹脱皮殻とカブト虫幼虫のクチクラに1N HClを加え, 100℃で20分間処理をして, diphenol 類を除去した後, 1N NaOHを加え, 80℃, 36時間をかけて, タンパク質の除去を行い, 昆虫由来キチンを得た。さらに40% NaOH溶液中で, 110℃, 4時間加熱してキチンの<i>N</i>-脱アセチル化を行い, キトサンを精製した。キチン及びキトサンの化学構造を<sup>13</sup>C FT-NMR, <sup>13</sup>C CP/MAS NMRスペクトル, FT-IRスペクトル, 元素分析により明らかにした。また, HPLC, UV, <sup>13</sup>C CP/MAS NMRの分析結果から, 昆虫クチクラの主成分として norepinephrine, DL-β-(3,4-dihydroxyphenyl) α-alanine などの diphenol 類であることを確認した。蚕の蛹脱皮殻にはタンパク質が62~67%, diphenol 類が15~20%, 脂質が1~2%, キチンが15~18%含まれており, カブト虫幼虫クチクラにはタンパク質が40~50%, diphenol 類が20~25%, 脂質が5%, キチンが20~30%が含まれていることを明らかにした。
著者
村上 理都子 白田 昭
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蠶絲學雜誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.135-142, 1998-10-27
参考文献数
15
被引用文献数
1

クワ暗斑病菌, <i>Myrothecium roridum</i> が生産する毒性成分はセイタカアワダチソウ, ヨモギ, ギシギシ, エノコログサなどの雑草を含む46種の植物に毒性を示した。その中で, クズ, ヤブガラシ, ツキミソウには強い毒性を示し, オオバコ, ドクダミ, ススキ, ササには極めて弱い毒性しか示さず, 本毒性成分は選択毒性をもつことが示唆された。また, 本毒性成分の植物への毒性は展着剤の添加により著しく高まった。本成分の生産に適した培地はジャガイモ・スクロース・寒天培地, 培養温度は25-30℃であり, 水で容易に抽出できた。また, 熱安定性であることから, 80℃3分間で殺菌しても活性は低下しない。本毒性成分の雑草への毒性, 生産性, 植物の選択性等の性質は除草剤としても適しており, 有用な資材となる可能性がある。
著者
四方 正義 村田 武 開発 基良
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.43, no.2, pp.157-162, 1974

幼虫脱皮, 蛹化脱皮, そして成虫化脱皮の各脱皮殻のリピドと, 5齢幼虫と蛹の生体表面から得たリピドの炭化水素の化学的組成を比較し, 脱皮のための炭化水素の存在意義についても考察した。さらに, 脱皮殻リピドの炭化水素に対する飼料の影響を見るため桑育と人工飼料育による5齢脱皮殻 (蛹化脱皮殻) についても比較した。<br>1. それぞれの脱皮殻, 生体表面の炭化水素ともn27が最も多く存在する。10%以上存在するものは4齢脱皮殻 (幼虫脱皮殻) でn25, n27, n29, n31, 5齢脱皮殻と5齢生体表面でn25, n27, n29である。蛹脱皮殻 (成虫化脱皮殻) と蛹の生体表面ではn27だけである。<br>2. <i>n</i>-飽和炭化水素は4齢脱皮殻リピドの炭化水素で95.2%を占めるが, 蛹化・成虫化と変態に伴って脱皮殻リピドのそれが減少し, 蛹脱皮殻で35.4%になる。<i>iso</i>-飽和炭化水素では変態に伴って反対に増加する。<br>3. 総奇数鎖は4齢脱皮殻で90.3%であるが, 蛹化・成虫化と変態に伴って減少し, 蛹脱皮殻で48.7%になる。総偶数鎖は, 変態に伴って反対に増加する。<br>4. 蛹化脱皮直前に, 急増する脱皮殻リピドには<i>iso</i>-飽和炭化水素が多いことが判った。これは繭内における蛹化脱皮を容易にすると考えられる。<br>5. 人工飼料育では桑育に比較して蛹化脱皮殻リピドの炭化水素の組成が幼虫脱皮殻リピドの組成に傾いているように見られる。
著者
永江 敏規 鈴木 直雄
出版者
日本蠶絲學會
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.40-45, 1982 (Released:2011-12-19)
著者
宮島 たか子 山本 俊雄 間瀬 啓介 飯塚 哲也 野崎 稔 木内 信
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蠶絲學雜誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.70, no.1, pp.37-42, 2001-04-27
被引用文献数
2

絹の新素材開発を目的に,イミダゾール系化合物のトリフルムゾールを投与して細繊度蚕品種の「はくぎん」及び「ほのぼの」の3眠化試験を行った。乾物重で140ppmのトリフルミゾールを添加した人工飼料を起蚕から3日間与えた場合の3眠化率は3齢ならびに4齢投与とも「はくぎん」は80%を越えたが,「ほのぼの」では30%以下と低かった。280ppm濃度になると両品種とも100%近い3眠化率を示すようになった。この「ほのぼの」の感受性が低いのは交雑親である日513号に由来することが分かった。3眠化率は4齢投与より3齢投与の方が高く,全齢経過日数は3齢投与より4齢投与の方が短くなった。3眠化蚕の繭糸質についてみると無投与区に比して繭層重の低下割合が最も高く,以下,繭重,繊度,繭糸長,繭層歩合,繭長,繭幅の順になり,繭幅より繭長の低下割合が高いので,繭形が丸みを帯びるようになった。繊度は3齢投与で「はくぎん」1.36d,「ほのぼの」1.72d,4齢投与で「はくぎん」0.99d,「ほのぼの」1.03d,と著しく細くなった。これらの3眠化蚕の産生する繭は繊度偏差も小さいので,極細の高級生糸による差別化製品の開発や医療・工業用への用途が期待される。
著者
河上 清
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蚕糸学雑誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.51, no.1, pp.46-51, 1982

蚕室における消毒効果の判定, または清浄環境の保持のため, 空中浮遊糸状菌を対象に, その汚染度の調査に, RCS・エアーサンプラーを用いたところ, 落下法に比べ, 菌捕集効果が著しく高く, 定量的検査が可能であった。さらに, 本器は軽量で操作が簡便なため, 迅速な菌捕集作業ができた。消毒翌日の蚕室の空気中の糸状菌数は, 0.5個/100<i>l</i>であり, 病蚕発生のない飼育中の蚕室での同菌数は1.0~7.5×10個/100<i>l</i>程度であった。なお, 蚕飼育中における糸状菌汚染度の改善に, グルタルアルデハイド剤の散布が有効であった。検出された主要な糸状菌は, <i>Penicil-lium, Aspergillus</i> で, 他には <i>Cladosporium, Geotrichum, Alternaria, Paecilomyces, Cephalosporium, Rhizopus, Mucor</i> があった。
著者
白 倫 王 建民 周 韶
出版者
日本蠶絲學會
雑誌
日本蠶絲學雜誌 (ISSN:00372455)
巻号頁・発行日
vol.68, no.4, pp.321-325, 1999-08-31
被引用文献数
2