著者
岡田 英史
出版者
認知神経科学会
雑誌
認知神経科学 (ISSN:13444298)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.44-51, 2010 (Released:2011-07-14)
参考文献数
8

生体組織内のヘモグロビンによる吸収と赤血球による散乱が、近赤外分光法(NIRS)の検出信号に及ぼす影響をシミュレーションによって解析した。細い単一血管を模擬したモデルでは、flow effectと呼ばれるNIRS信号に対する赤血球の散乱変化の影響が大きくなった。これに対して、血液と周囲の組織からなる生体組織モデルでは、散乱変化のNIRS信号への寄与は小さく、NIRS信号が主としてヘモグロビンなどの吸収変化に依存することが明らかになった。NIRSによる脳機能計測は生体組織モデルを対象としたものに近いため、NIRS信号を脳機能賦活によるヘモグロビン濃度変化に起因するものと近似して解析を行う方法は妥当であると考えられる。
著者
阿川 雄資 岡田 英史 関塚 永一 大塩 力 南谷 晴之
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. D-II, 情報・システム, II-情報処理 (ISSN:09151923)
巻号頁・発行日
vol.76, no.2, pp.397-405, 1993-02-25
被引用文献数
8

微小循環系は生体組織における物質交換という重要な役割を担っており,その血管内における赤血球動態を解析することは,極めて重要である.従来,点計測が主流であった微小循環計測において,顕微鏡と超高速VTRシステムを用いて記録されたラット腸間膜の血流画像を動画像処理することにより,2次元の速度情報を得ることが可能となる.しかし,従来用いられていた濃度こう配法に基づく動画像処理法は,その性質方速度の速い対象に適用できず,またノイズに弱いという欠点をもっていた.そこで本研究では,動画像処理法として局所相関法を採用し,更に速度ベクトルの推定に階層画像を用いることによって,流速の速い細動脈などにも適用できるだけでなく,高速でかつ安定した測定の行える処理アルゴリズムを開発した.このシステムを用いて,ラット腸間膜上の細動脈・細静脈などの微小血管(管径約20〜50μm)の血流速度計測を行い,本システムの有効性を示すと共に,血流分布に関するいくつかの新しい知見が得られた.