- 著者
-
今井 正樹
岡田 誠之
武藤 暢夫
- 出版者
- 社団法人空気調和・衛生工学会
- 雑誌
- 空気調和・衛生工学会論文集 (ISSN:0385275X)
- 巻号頁・発行日
- no.67, pp.57-65, 1997-10-25
- 被引用文献数
-
1
大都市を中心とした水需要の増大に対し,水資源の高度利用,下水道への排水量の抑制を主目的とする水の再利用システムとして,"中水道"の開発,実用化が進められてきた.本研究においては,配水管の通水能力の減少,管路の閉そく,熱交換器などの熱交換率の低下,スライムの発生に伴う局部腐食の増加などを引き起こしている"スライム障害"を水質面から取り上げ,具体的にはスライムの発生形態および発生要因を中心に,最終的にスライム発生を抑制させる目的で,特に中水の水質との関連性を踏まえて実験を進めた.主な検討項目は,(1)スライムの発生,生育条件の検討,(2)スライムの抑制,(3)スライムの生物活性,である.次に研究結果を要約すれば以下のとおりとなる.1)実排水および人工下水を用いて,スライムを発生させた場合,処理原水に対して凝集沈殿処理水ではその30%,砂ろ過処理水では10%まで発生を抑制できた.2)スライムの発生は水中の栄養塩類としてN,P化合物の存在が大きく影響し,とりわけPの存在は発生の主要因となっている.3)発生の経時的変化は一次反応の形態をとることが確認された.4)今回のスライムの組成はC_7H_<12>NO_6で示され,生物体としての細菌の組成と類似しており,酸素吸収量からも生物体としての活性が認められた.