- 著者
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岩佐 真也
- 出版者
- 兵庫県立大学
- 雑誌
- 兵庫県立大学看護学部・地域ケア開発研究所紀要 (ISSN:18816592)
- 巻号頁・発行日
- vol.14, pp.57-65, 2007-03-15
セネガルでは、国の方針として基礎保健員(以下ASCと略す)と呼ばれるコミュニティーヘルスワーカーの活動を期待している。しかし、その育成方法は各州・県に委ねられている。筆者は青年海外協力隊・保健師隊員として、セネガルでの活動の際にASC育成に関わった。その育成時に直面した「人選」の問題を通してASCの適切な選出条件を検討する。研究対象者は、1998年9月から2000年1月までにセネガルの農村部であるA村のASC候補者となった5人で、この5人が候補者として選出された経緯や性別、年齢、職業、現住所、出身村、村での役職、配偶者の職業、候補者以外の家族員の村での役職について比較検討を行った。その結果、候補者の性別は男性1名女性4名であり、年齢は20歳代から30歳代であった。現住所は保健小屋(ASCの活動拠点となる施設)のある村に在住している者が4名、そうでない者が1名であった。5人の候補者(A氏〜E氏)の内ASCに選出された者はE氏であった。それ以外の4名の落選理由は、A氏の場合、有職(農業)者であることと保健委員長としてA村で活動していることであり、C氏の場合は義父が村長で義母が産婆であるため、D氏はA村外在住であるためだった。また、B氏については候補者となったが、夫の病気、自身の妊娠・出産、また産後の健康状態がふるわず、ASCを辞退していた。A村での選出過程を通してセネガルの農村部におけるASCの重要な選出条件は、1.ASCが保健小屋のある村の出身か、そうでない場合はASCの出身村が保健小屋のある村と関係性が良好であること。2.ASCとして活動に専念できることを期待されているため、20〜40歳代の無職の者で、かつ女性は近い将来出産の予定がないこと。3.ASCの一家族内に、村での重要な役職に就いている者がいないこと。4.ASCの配偶者が現金収入を得ているといった、ASCの家族の経済状態が安定していることであった。