著者
津田 基之 岩佐 達郎
出版者
姫路工業大学
雑誌
重点領域研究
巻号頁・発行日
1996

多くの視物質のアミノ酸配列が明らかにされており、視物質は分子進化を研究する上で格好な蛋白質である。しかしその多くは脊椎動物の視物質で、無脊椎動物では昆虫と頭足類に限られている。これらは動物界ではほんのわずかな種類であり、分子系統樹を確立するためには広い動物種の視物質の情報が必要である。我々はすでに頭足類タコ、無顎類やつめうなぎの視物質のクローニングをした、昨年はプラナリアの視物質のクローニングを行いこれが頭足類に似ていることを示した。本年は種々の無脊椎動物の眼のcDNAを得て試してみたところ、ゴカイ、クラゲ、ヒトデ等からロドプシンに相同性を示すDNA断片を得ることができた。さらにクラゲでは全長の遺伝子をクローニングできた。原索動物ホヤの幼生は脊椎動物の始原型であり、特に重要である。我々は、ホヤの初期幼生cDNAライブラリー、初期幼生の種々のステージの全RNAから得たcDNA、ゲノムDNAをテンペレートとしてPCRを試みても、目的とするサイズの特異的バンドは得られなかった。そこでタコロドプシン遺伝子、ウシロドプシン遺伝子をプローブとして種々の条件でサザンハイブリダイゼーションを行ったところ、各々のプローブに相同性を示す、いくつかのバンドを同定することが出来た。現在これらの知見を基にホヤのゲノムライブラリーのスクリーニングを行ている。