著者
泉本 勝利 岩原 良晴 三浦 弘之
出版者
帯広畜産大学
雑誌
帯広畜産大学学術研究報告. 第I部 (ISSN:0470925X)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.187-196, 1983-11-30

食肉の脂質酸化の測定について精度の高い条件を見出すため,2種のマロンアルデヒド(MA)測定法,すなわち抽出法および蒸留法によるチオバルビツール酸(TBA)値測定法を比較検討した。得られた結果は次のとおりである。1)抽出法において,加熱中に著しい脂質酸化が起こり,反復抽出によってもTBA値は減少しなかった。そのため食肉中の真のMA量は測定できなかった。挽肉よりもMAの抽出性を良くするために,試料を均質化したが,黄色い物質の出現によりTBA値を測定する538nmの吸光度は挽肉よりも低くなった。2)蒸留法において,加熱中に脂質酸化が起こり,これはブチルヒドロキシトルエン(BHT)を加えても完全には抑制できなかった。回収試験において,溶液中のMAは肉のMAに較べ,より速く,完全に蒸留された。そこで,食肉からMAが抽出される速度は非常に遅いと考えられた。食肉のMA回収率測定のために,1,1,3,3-テトラエトキシプロパン(TEP)もしくは1,1,3,3-テトラメトキシプロパン(TMP)を肉に混合する方法は,真の回収率が得られないことを示唆した。3)蒸留法は抽出法よりも優れていた。しかし加熱中に脂質酸化が起こった。精度の高いTBA値を得るためには,蒸留法の改良もしくは加熱をしない方法の開発が必要と思われる。