著者
浅野 澄子 若松 由実子 黒沢 睦子 岩崎 和代 伊藤 京子 西田 真澄 野島 町子
出版者
The Japanese Society for Dialysis Therapy
雑誌
日本透析療法学会雑誌 (ISSN:09115889)
巻号頁・発行日
vol.18, no.4, pp.437-441, 1985

日本のCAPD患者の入浴の状況は, 腹膜炎やトンネル感染を恐れ, 満足できる現状とはいえない. 我々は細菌汚染の面から浴槽内の湯と皮膚の状態を調査し, カテーテル出口部の状態による入浴の可否と方法を判定する基準を設定し, 患者指導に役立てたいと考え検討した.<br>昭和55年6月より59年5月までにCAPD導入した15例を調査対象とした. カテーテル出口部良好患者6例における入浴 (院内浴場-番湯) 前後の皮膚の3部位の, 細菌培養を施行した. その結果を参考にして, カテーテル出口部の状態による入浴基準を3段階に作製した. 大衆浴場4件と一般家庭風呂5件の入浴前後の湯の細菌培養を施行した.<br>当院で導入した15例中8例で計21回の腹膜炎が発生した. この起因菌は黄色ブドウ球菌4例, グラム陰性桿菌2例, 他カンジタ, グラム陽性球菌, セラシア属, ナイセリア, アシネトバクタアニトリウス各1例ずつ, 陰性10例であった. 腹膜炎発症直前の浴槽内入浴は2例であったが, 出口部の状態も良好であり, 起因菌培養は陰性であった. 一般家庭風呂の入浴前の細菌培養ではグラム陽性桿菌2件, 緑膿菌以外のシュードモナス属3件, 菌検出陰性1件を認め, 入浴後では1件にアエロモナスハイドロフィアが検出され, また1件が菌検出陰性へ変化した. 大衆浴場4件中1件のみグラム陽性桿菌を検出したが, 一般家庭風呂とに菌種類に著変はなかった. 6例の出口部良好患者の入浴前後の皮膚の3部位において, 検出された菌種には, 入浴前後で変化なくグラム陽性球菌を高頻度に検出した.<br>CAPD導入患者15例中8例計21回の腹膜炎がみられた. 入浴後に発症した腹膜炎は2回あったが, 出口部状態も良好で起因菌陰性の結果から, 入浴が原因となる腹膜炎と断定する根拠はなかった. また腹膜炎患者6例計8回カテーテル出口部の異常を認めた. 以上から, カテーテル出口部の状態による入浴基準を作製し入浴の可否を決定しているが現在までに入浴によるトンネル感染および腹膜炎の発生をみていない.
著者
岩崎 和代 齋藤 益子 木村 好秀
出版者
一般社団法人 日本女性心身医学会
雑誌
女性心身医学 (ISSN:13452894)
巻号頁・発行日
vol.18, no.2, pp.225-233, 2013-11-30 (Released:2017-01-26)
被引用文献数
2

20歳女子大生,小学生保護者,勤労女性の3群62名を対象に子宮頸がん検診行動の影響要因をフォーカス・インタビューで明らかにした.過去2年以内の子宮頸がん検診率は,保護者群90.5%,勤労女性群66.7%,女子大生群0%で,住民検診の利用が多く,きっかけは年齢的な動機や自治体からの案内であった.検診行動への影響要因として8カテゴリーが集約され,「必要性に対する情報不足・知識不足」「検診方法のためらい」「受診行動の相互影響」「受診アクセスの不便」「受診環境への不満」「きっかけ不足」「皆で受ける安心感」「教育不足」であった.このうち,検診行動を高める要因は「皆が受ける安心感」に集約され,連帯意識や待ち時間が少ない巡回検診車の利用,集団検診が支持された.保護者群や勤労女性群でも検診目的の理解は不十分で,検診環境への不満や検診時に痛みや出血を経験し,医師への技術不信を抱いていた.大学生群は子宮頸がん予防行動への教育機会の不足が伺われた.物理的な検診促進の要件として夜間・土日の検診を求めていた.