著者
岩本 英久 梶原 康博 滝 聖子 関 洲二
出版者
社団法人日本経営工学会
雑誌
日本経営工学会論文誌 (ISSN:13422618)
巻号頁・発行日
vol.58, no.3, pp.208-217, 2007-08-15

技能の伝承や保存のために,技能者の動作をモデル化し,その動作の特徴を明らかにすることは重要なことである.本研究では,技能者による動作のモデルとして,技能伝承訓練段階であっても,患者の生命に危険を与えてはならない外科手術における運針動作を対象にする.運針動作のモデル化は,外科医の運針軌跡を4種類のパターンに設定し,ロボットで再現することによって行う.運針動作の特徴は,縫合針の軌道と運針後の軌跡を比較するとともに,持針器に加わる回転トルクを測定して考察する.その結果,縫合針円に沿った運針パターンは,軌道と軌跡の差および回転トルクを最小にできることが示された.実際の手術現場では,縫合針円よりも深い運針を行っているので,縫合針円より深く補正する運針パターンの中で比較すると,縫合長さの中央で深く補正する運針パターンが軌道と軌跡の差が小さく,回転トルクの小さい運針であった.