著者
塩川 太郎 岩橋 統
出版者
日本昆虫学会
雑誌
昆蟲. ニューシリーズ (ISSN:13438794)
巻号頁・発行日
vol.3, no.4, pp.157-165, 2000-12-25
被引用文献数
2

オキナワノコギリクワガタの雄は, 体サイズ及び大アゴの形態により, 大型(L), 中型(S2), 小型(S1)の3つの型に分けられる.雄間闘争で不利であると考えられる最も小形の雄(S1型)が, 野外で多数発見されることから, これらの雄は大形の雄(L型)とは異なる方法で交尾成功を得ていると考えられた.そこで野外における雌と各型の雄の時刻別の出現頻度と交尾率を調べた.その結果, L型の交尾率は, 雌の出現数が最大となった22∿23時にピークとなる一山型を示したのに対し, S1型の交尾率は, 日没後の20∿21時と明け方の4-5時にピークを持つ二山型となった.また, 中形の雄(S2型)は, L型と同じ時刻にピークを持つ一山型の交尾率を示した.観察された交尾数は, L型とS1型がともに同じ(70)であった.しかし, 1日の交尾率で比較すると, L型は46.1%であるのに対して, S1型は18.6%とL型の2分の1以下となった.以上のことより, S1型は, L型及びS2型とは異なる時刻に交尾成功を得ていることが分かったが, 1日当りの交尾成功が低いことから, シーズンを通した交尾成功の調査が必要と考えられる.