著者
岩渕 和也
出版者
日本臨床免疫学会
雑誌
日本臨床免疫学会会誌 (ISSN:09114300)
巻号頁・発行日
vol.35, no.4, pp.317b, 2012

&nbsp;&nbsp;ベーチェット病は,医学文献としてはトルコのベーチェット博士の記述(1936年)を嚆矢とするが,疾患の特徴(アフタ・外陰部潰瘍・眼症状など)については既にヒポクラテス(紀元前5世紀)や張仲景(AD200年頃)の時代から記述があり,古くからヒトに関わりの深い疾患である(大野博士).未だに疾患発症に至る過程に不明の点も少なくないが,2010年には水木博士(横浜市大)・大野博士(北大)・猪子博士(東海大)のチームによるゲノムワイド相関解析により,HLA-B*51, A*26, IL-10, IL-23R/IL-12RB2,などの疾患感受性遺伝子が明らかにされ,また最近では何らかの自己炎症性症候群スペクトラムを有することも示唆され,大きく疾患理解が進んでいる.一方,マウスモデルについては,残念ながらベーチェット病の皮膚・眼症状,さらには特殊病型を再現するようなモデルは開発されていない.我々も,眼炎症を抗原(視細胞間レチノイド結合タンパク由来ペプチド)特異的に生じさせる実験的自己免疫性網膜ぶどう膜炎(EAU)をモデルに,眼炎症の病態理解とその実験的制御を試みているのみである.ただ,このように限界のあるモデルにおいても,ベーチェット病で見られると同様にTh17およびTh1が自己免疫病態に関わっていることが示されており,効用もまた存在している.本ワークショップでは,オステオポンチンやNKT細胞を標的とした,EAUの病態制御について紹介したい.<br>
著者
小野江 和則 岩渕 和也 小笠原 一誠
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

NK-T細胞の分化と機能について研究を行った。先ずリンパ節、パイエル板を欠くaly/alyマウスにおいて、NK-T細胞の分化障害があり、これはaly/alyマウスの胸腺構築異常に起因することを、骨髄キメラを用いて初めて明らかにした。次に、NK-T細胞がVα14を発現しないTCRトランスジェニックマウス(DO11.10)においても産生されること、これらはクローン消去、及びアナジーによるnegative selectionを受けることを明らかにした。さらにNK-T細胞の分化にはチロシンキナーゼのZAP-70の存在が必須であることを明らかにした。また、ZAP-70ノックアウトマウス胸腺には、NKl.1^+TCRαβ^-細胞が増加しており、これらをPMAとイオノマイシンで刺激するとVα14NK-T細胞に分化することを明らかにした。従ってZAP-70ノックアウトマウスのNKl.1^+TCRαβ^-細胞は、NK-T細胞の前駆細胞であることが判明した。さらにaly/alyマウスにおけるNK-T細胞分化欠落の原因を明らかにする研究を行い、NIK突然変異の影響が、胸腺髄質細胞の機能不全を誘導し、その結果NK-T細胞のpositive selectionが生じないことを明らかにした。従って、NK-T細胞の分化には、CD4^+8^+肺腺細胞上のCD1分子と、胸腺髄質上皮細胞からの第2シグナルが必要なことが判明した。最後に自己免疫マウスのNK-T細胞を解析し、1prマウスでは異常がないこと、(NZB/NZW)F1マウスでは加齢とともにNK-T細胞が減少することを明らかにした。NK-T細胞の減少は、自己抗体によることを示唆する結果が得られつつある。