著者
小野江 和則 岩渕 和也 小笠原 一誠
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1997

NK-T細胞の分化と機能について研究を行った。先ずリンパ節、パイエル板を欠くaly/alyマウスにおいて、NK-T細胞の分化障害があり、これはaly/alyマウスの胸腺構築異常に起因することを、骨髄キメラを用いて初めて明らかにした。次に、NK-T細胞がVα14を発現しないTCRトランスジェニックマウス(DO11.10)においても産生されること、これらはクローン消去、及びアナジーによるnegative selectionを受けることを明らかにした。さらにNK-T細胞の分化にはチロシンキナーゼのZAP-70の存在が必須であることを明らかにした。また、ZAP-70ノックアウトマウス胸腺には、NKl.1^+TCRαβ^-細胞が増加しており、これらをPMAとイオノマイシンで刺激するとVα14NK-T細胞に分化することを明らかにした。従ってZAP-70ノックアウトマウスのNKl.1^+TCRαβ^-細胞は、NK-T細胞の前駆細胞であることが判明した。さらにaly/alyマウスにおけるNK-T細胞分化欠落の原因を明らかにする研究を行い、NIK突然変異の影響が、胸腺髄質細胞の機能不全を誘導し、その結果NK-T細胞のpositive selectionが生じないことを明らかにした。従って、NK-T細胞の分化には、CD4^+8^+肺腺細胞上のCD1分子と、胸腺髄質上皮細胞からの第2シグナルが必要なことが判明した。最後に自己免疫マウスのNK-T細胞を解析し、1prマウスでは異常がないこと、(NZB/NZW)F1マウスでは加齢とともにNK-T細胞が減少することを明らかにした。NK-T細胞の減少は、自己抗体によることを示唆する結果が得られつつある。
著者
喜田 宏 梅村 孝司 迫田 義博 伊藤 壽啓 小笠原 一誠 河岡 義裕 岡崎 克則
出版者
北海道大学
雑誌
基盤研究(S)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、家禽と家畜のインフルエンザの被害を未然に防ぐとともに、ヒトの新型インフルエンザウイルスの出現に備え、その予防と制圧に資することを目的とする。・動物インフルエンザのグローバルサーベイランスによるウイルス分布の解明2006年秋、日本、モンゴルにおいて採取された渡りガモおよびハクチョウの糞便材料からのウイルス分離を試みた。1,201検体の材料から合計55株のインフルエンザAウイルスを分離同定した。これらの分離株にはH5やH7亜型のインフルエンザウイルスは含まれていなかった。これまでのウイルス分離の成績と合わせると、H1-H16およびN1-N9までの144通りの組合せのうち、133通りのウイルスの系統保存を完了した。・インフルエンザウイルスの病原性決定因子の同定2006年夏、モンゴルの湖沼で死亡野烏が再び発見され、死亡したオオハクチョウおよびホオジロガモの臓器材料からH5N1亜型の高病原性鳥インフルエンザウイルスが分離された。分離されたウイルスは、2005年中国やモンゴルの野生水禽から分離された高病原性のH5N1ウイルスと8つの遺伝子分節すべてが近縁であった。また、このウイルスに対して哺乳動物が高い感受性を示すことが動物試験から明らかにした。・ベッドサイド早期迅速インフルエンザ診断法の開発A型インフルエンザウイルスH5およびH7亜型抗原を特異的に検出する簡易診断キットを開発した。本キットの有用性を実験感染動物の材料を用いて評価したところ、NP検出キットより感度は劣るが、H5およびH7抗原を特異的に検出でき、ベットサイド診断法として有用であることが確認された。