著者
岩田 恵子
出版者
日本保育学会
雑誌
保育学研究 (ISSN:13409808)
巻号頁・発行日
vol.49, no.2, pp.157-167, 2011-12-25

本研究においては,幼稚園における子どもたちの仲間づくりが,社会的集団のあり方と相互規定的なものとして存在することを前提として,子どもたちの仲間集団の形成とそのプロセスにみられる「排除」「いざこざ」の意味を問い直すことを目的とした。3年保育の幼稚園における子どもたちの自由遊び場面におけるやりとりの事例分析の結果,子どもたちは不安定な中で小さな共通点から「安心」できる場の形成を試み,それとともに「排除」ととれる行為が構成されていること,ただし,そのままの状態には留まらず,多様な関係の可能性をさぐる「いざこざ」の中で他者を理解した上での「信頼」関係の形成が試みられることが見出された。幼児期の仲間集団の形成は,個々の社会的なスキルを身につける側面からだけではなく,集団のダイナミクスからその行為の意味を検討する必要が示唆された。