著者
岩見 哲也 西 正博 吉田 彰顕
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. B, 通信 (ISSN:13444697)
巻号頁・発行日
vol.92, no.1, pp.224-232, 2009-01-01
被引用文献数
2

これまで陸上伝搬のみならず海上伝搬特性を明らかにすることを目的として,多くの電波伝搬実験が行われてきた.本研究で対象とした瀬戸内地域は,対岸からの電波が到来しやすい環境であるが,その測定例は少ない.筆者らは,今後地上デジタルテレビ放送や移動通信への利用が検討されているUHF帯に着目し,標高の異なる2箇所の受信点において瀬戸内海上を伝搬したUHF帯テレビ放送波の定点測定を行った.18か月間の測定データから各受信点における伝搬損の月ごと累積確率分布や1時間ごとの伝搬損変動幅を算出することで,伝搬特性の定量的な評価を行った.また,直接波と海面反射波を想定し,従来から知られている2波モデルに基づいて大気屈折率と潮位の変動を考慮し,伝搬特性の考察を行った.測定の結果,受信点の標高が高く直接波と海面反射波の経路長差が大きいほど,伝搬損の変動が大きくなることを確認した.この伝搬損変動は大気屈折率の変化に伴うK形フェージングによって生じること,また大気屈折率が変化せず伝搬路が安定する場合にも,反射点の潮位の変化に伴って約12時間周期の伝搬損変動が生じることが分かった.また2波モデルによる考察から,瀬戸内地域におけるUHF帯電波の海上伝搬特性は,大気屈折率と潮位の両方の影響を考慮する必要があることを示した.