- 著者
-
岩間 文雄
- 出版者
- 関西福祉大学社会福祉学部研究会
- 雑誌
- 関西福祉大学社会福祉学部研究紀要 (ISSN:1883566X)
- 巻号頁・発行日
- vol.18, no.1, pp.11-18, 2015-03
ソーシャルワークは,人と環境の交互作用に働きかけ,生活上の問題を抱えるクライエントの状況をよりよく改善する手助けを目的とした専門職の援助実践である.その具体的展開にあたって,効果的・合理的に援助を展開する上で,ソーシャルワークの援助展開に関する理論的枠組みは,実践者にとって欠かすことができない.例えば,登山者が目的地にたどり着くという目的を達成するために方位が記された地図が欠かせないように,プロセスについての理論的枠組みは,ソーシャルワーカーとクライエントの協働によるソーシャルワークをどんな手順で展開し,各段階においてどのような内容の働きかけを行う必要があるのか検討するための思考の基盤を提供してくれるものである.しかし,ソーシャルワーク実践に関する文献のレビューを通じて分かることは,ソーシャルワークの展開過程の枠組みについての解説は,大枠において本質的な特徴は共通しているものの,細部や段階の区分については研究者ごとに多くの相違点があるという現状である.そうした文献によって異なるソーシャルワーク展開過程の枠組みについて検討し,整理を試みる.本論では,ソーシャルワークの展開過程の理論的枠組に着目し,文献研究を通じてその性質と構成要素について検討することを目的とする.以下,Ⅱ.では,ソーシャルワークの展開過程を検討するうえで前提となる,ジェネラリスト・ソーシャルワークの成立背景と概念について整理する.Ⅲ.ではソーシャルワークの展開過程の特徴と構成要素について文献ごとの解説を比較し,それぞれで共通する点と異なる点を明確にしていく.Ⅳ.では,ソーシャルワークの展開過程の理論的枠組みにおけるバリエーションについて分析を深める上での課題について述べる.