著者
岸尾 光二
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.176-180, 1992-04-20 (Released:2009-11-11)
参考文献数
7

約5年前に誕生し, 超伝導の歴史を完ぺきといえるほどまでに書き換えてしまった高温の超伝導体は, そのほとんどが銅の酸化物を基本としている。酸化物の発見以前にはその上昇を強く拒んでいた超伝導臨界温度 (当時23Kが最高であった) が, またたく問に100K近くに上昇するという大事件であった。酸化物の分野ではほぼ未開拓であったともいえるこれら銅の複合酸化物群に, その後続々と見出された一連の超伝導体は, 真っ黒な色を示す。なぜ, これらの物質は黒く見えるのか, 黒いことに何らかの必然性があるのかについて考えるとともに, この件についての発見当時の混乱状況などについても紹介してみたい。