著者
岸尾 光二
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.13, no.3, pp.176-180, 1992-04-20 (Released:2009-11-11)
参考文献数
7

約5年前に誕生し, 超伝導の歴史を完ぺきといえるほどまでに書き換えてしまった高温の超伝導体は, そのほとんどが銅の酸化物を基本としている。酸化物の発見以前にはその上昇を強く拒んでいた超伝導臨界温度 (当時23Kが最高であった) が, またたく問に100K近くに上昇するという大事件であった。酸化物の分野ではほぼ未開拓であったともいえるこれら銅の複合酸化物群に, その後続々と見出された一連の超伝導体は, 真っ黒な色を示す。なぜ, これらの物質は黒く見えるのか, 黒いことに何らかの必然性があるのかについて考えるとともに, この件についての発見当時の混乱状況などについても紹介してみたい。
著者
西森 拓
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.16, no.4, pp.267-272, 1995-04-10 (Released:2009-11-11)
参考文献数
12

風紋と砂丘をコンピュータの中で作ってみた。非常に単純なルールに基づいたシミュレーションではあるが, 現実の系の特徴をよくとらえている。本稿では, 風による砂表面での基本的なダイナミクスを解説するとともに, シミュレーションを通じて, 砂地形のパターン形成のからくりを明らかにしていく。
著者
最田 優
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.14, no.4, pp.238-242, 1993-06-01 (Released:2009-08-07)
参考文献数
7

ウイスキーのおいしさは,その由来から<穀物のうまさ><醸しのうまさ><蒸留のうまさ><熟成のうまさ>の四つに分けられる。中でも熟成のうまさを兼ね備えていることがウイスキーを世界中で飲まれる酒に育て上げた大きい要因と考えられる。ウイスキーの熟成はオーク樽に長い年月貯蔵して初めて得られるものであり,ウイスキーを飲むことは時間を飲むことだといえる。 樽貯蔵中には樽材を通した蒸散,樽材成分の分解溶出,種々の成分間の反応などの物質の変化と共に,物性の変化がゆっくりと起こる。樽貯蔵はアルコール度数60%前後で行われているが,貯蔵中にエタノールと水の分子会合が進み,大きいクラスターが貯蔵年数と共に増加する。また、熟成したウイスキーなどでは誘電率の低下や,気相でのエタノール蒸気分圧の低下などが知られている。このような溶液の状態の変化が,物質の変化と共にウイスキーの味わいのまろやかさをつくりあげている。 最近のクラスターの解析から幅広い濃度でのエタノール水溶液の特徴がわかってきている。ウイスキーを水割りで飲む場合の濃度は溶液の状態が大きく変化する範囲にあり,水割りとして好まれる濃度との関係でおおいに興味をひかれる。
著者
加藤 雅恒 榊原 健二 小池 洋二
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.20, no.10, pp.737-741, 1999-10-10 (Released:2009-08-07)
参考文献数
17
被引用文献数
1

Recently, much attention has been paid to the microwave processing in the preparation of inorganic materials. The advantages of microwave processing are uniformity of heat treatment and saving of energy and time, which are similar to those of microwave cooking. In this report, our recent research of the synthesis of High-Tc superconductors using a domestic microwave oven is described. We have succeeded in obtaining single-phase samples of the Y-123, Bi-2201 and Bi-2212 phases for several ten min without any post-heat-treatment using an electric furnace. In addition, several reports on the synthesis of other inorganic materials using a domestic microwave oven are introduced.
著者
一宮 彪彦
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.908-917, 1989-12-20 (Released:2009-08-07)
参考文献数
4
被引用文献数
3 3

実際の結晶表面は表面層としての2次元結晶の下に3次元バルク結晶が接続している。ここではバルクによる電子線の屈折による回折波の方向の変化とそれによるRHEED図形について,種々の表面の例について述べる。
著者
一宮 彪彦
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.10, no.9, pp.573-578, 1989-10-20 (Released:2009-11-11)
参考文献数
3
被引用文献数
3 3

反射高速電子回折 (RHEED) 図形の解釈について種々の例について述べる。本稿 (1) では, 2次元結晶の逆格子を示し, エワルド球との交点から得られるRHEED図形の特徴を, いくつかの2次元結晶 (微結晶, 多結晶, モザイク結晶など) について述べる。この結果に基づいて続編 (2) ではバルク結晶内でのブラッグ反射とRHEED図形との関係, および種々のバルク表面形態に対する回折図形の特徴を示す.
著者
Koji Hara Yukihiro Tominari Masakazu Yamagishi Jun Takeya
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
e-Journal of Surface Science and Nanotechnology (ISSN:13480391)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.426-426, 2015-09-19 (Released:2015-09-19)
参考文献数
2

On July 30th 2015, the Editor-in-Chief sent a letter to the corresponding author of the above-mentioned manuscript [1] about the result of survey by the Editorial Committee of e-J. Surf. Sci. Nanotech. According to the letter, the Committee concluded that the above-mentioned manuscript resembles the paper published in another journal [2] too much. As a result of this report, all of the authors of the above-mentioned manuscript have agreed to a complete retraction of the paper.
著者
中村 孝
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.17, no.11, pp.666-670, 1996

強誘電体をメモリなどの半導体集積回路に応用する研究が盛んに行われている。それに伴い強誘電体の成膜などのプロセス技術や物性についてもメモリ素子への応用という観点から研究が進み強誘電体メモリの実用化は秒読み段階になってきた。しかし, 高信頼化や高密度化に向けてまだまだ課題が数多く残されている。高信頼化に向けて現在抱えている問題点としては,データ保持特性, 書換え耐性や耐環境性である。これは, 材料や強誘電体の膜質はもちろんのこと, キャパシタ形成後の還元雰囲気やストレスなどによる劣化が問題となっている。高密度化に対しては, 表面モフォロジーの改善, 薄膜化, エッチングプロセスの特性向上などが望まれてくるであろう。このように, 強誘電体のメモリ応用という観点からPZT系強誘電体を中心に, 材料, プロセス, 電気特性について述べていく。
著者
浅野 新
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.15, no.7, pp.473-478, 1994-09-10 (Released:2009-08-07)
参考文献数
7
被引用文献数
3 2

太陽紫外線の特性,それにより引き起こされるさまざまな皮膚反応,その防御技術と防御効果評価法など,紫外線と皮膚とのかかわりについての簡単な解説を試みた。 地表に到達する紫外線の波長範囲は290~400nmであり,320nmを境に短波長側をUV-B,長波長側をUV-Aとに分類されている。290nm以下の紫外線はオゾン層に吸収され,地表には到達していない。皮膚には,ケラチン蛋白とメラニン色素が存在し,紫外線を物理的,化学的に遮断している。しかし,多量の紫外線を浴びた場合には急性皮膚反応,また長期間にわたり浴びた場合には慢性皮膚反応が起こる。急性反応としては,一般的に日焼け反応として知られている,紅斑,表皮肥厚,落屑反応がある。慢性反応としては,しわ,たるみに代表される光加齢反応がある。このような紫外線による皮膚障害を防御するために,さまざまな紫外線吸収剤,散乱剤を配合した,サンスクリーン製品が開発されている。サンスクリーン製品の紫外線防御効果を評価するために,SPF(San Protecting Factor)測定法基準が設定されている。
著者
三宅 晃司 相磯 良明 小宮山 真 重川 秀実
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.15, no.8, pp.541-544, 1994

Highly oriented pyrolytic graphite treated with NaOH solution was found to form a stage-8 intercalation compound. Superstructures such as 2x2, √3×√3 and noble orthorhombic lattices were observed on the surface, as previously observed on the surfaces of the stage-1 M-GIC (graphite intercalation compound, M=Li, K, Rb, Cs). On the contrary, substrate lattice structure was observed on NaOH-treated MoS<SUB>2</SUB>. In addition, new structures near the Fermi level were found to be formed by NaOH-treatment on the surface.
著者
湯澤 哲夫 久保田 純 近藤 淳子 堂免 一成 廣瀬 千秋
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.15, no.6, pp.359-363, 1994-08-10 (Released:2009-08-07)
参考文献数
23

Coadsorption-induced recombination of surface hydroxyl species (OD(a)) on Ni (110) was verified by infrared reflection absorption spectroscopy (IRAS) and temperature programmed desorption (TPD). The O-D stretching mode of the surface hydroxyl species appeared at 2650 cm-1 at 173 K on D2O/ONi (110) surface. The hydroxyl species were thermally recombined and desorbed as D2O from the Ni (110) surface at 350 K. The recombination of the OD species to water (2731 and 2567 cm-1), was also observed at a lower temperature (117 K) when CO was coadsorbed. This OD recombination induced by CO adsorption is considered to result from a strong effect of coadsorbed CO, which lowers the reaction temperature from 350 to 117 K.
著者
梶田 勉
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.9, no.5, pp.378-383, 1988-07-10 (Released:2009-11-11)
参考文献数
8

Co-Mn Conposite oxide films were formed on stainless steel electrodes by polarizing them slightly cathodically in a dilute aqueous solution containing Co2÷ and MnO4- ions. The solutions were supersaturated with sparingly soluble compounds, Co2O3 and MnO2, which were produced as a result of the redox reaction between Co2+ and MnO4- ions. Supersaturation was kept during the film formation. The [Mn] / [Co] ratio of the films varied with the concentrations of Co2+ and MnO4- ions in the solution, the elapsed time from solution preparation, and the electrode potential of stainless steel. This method is applicable to the film formation of sparingly soluble compounds on conductive materials.
著者
金田 千穂子 山崎 隆浩 宇田 毅 内山 登志弘 寺倉 清之
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.20, no.10, pp.732-736, 1999-10-10 (Released:2010-02-05)
参考文献数
12
被引用文献数
2 1

Stable structures and electronic states of Si(100)/SiO2 interface are investigated using the first-principles molecular dynamics method. Quartz, tridymite, and pseudo beta-cristobalite are employed as the initial structures of the SiO2 at the interface to find the stable ones by the structural optimization. It is found that the optimized tridymite-type SiO2 structure on Si is the most stable for thin (about 7Å) SiO2 layer. For the thicker (about 15Å) layer, however, this structure becomes less stable and the optimized quartz-type SiO2 structure is the most stable. The band gap variation along the direction perpendicular to the interface is also investigated for the optimized structures. In the SiO2 region within 1Å from the structural interface, the band gap remains as narrow as that of silicon. The drastic change of the band gap takes place in the SiO2 region between 1 and 4Å.
著者
村上 義夫
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.12, no.8, pp.520-524, 1991-10-10 (Released:2009-08-07)
参考文献数
10

拡散ポンプ油などの液体を真空中で円滑に蒸発させることはそれほど簡単ではない。真空中で加熱された液体の表面には蒸発が盛んに起こるworkingareaと静かで蒸発があまり起こらないtorpid areaが共存していることが多く,torpid areaが優勢な場合にはしばしば爆発的な沸騰(突沸)を起こす。そこで,液体を過熱せずに(熱分解させずに)安定的に多量の蒸気を得るためには,加熱法に何らかの工夫が必要である。本稿では,25年ほど前に行われた研究に基づいて,まず,液体の蒸発面にみられるtorpid現象と突沸現象について概説し,つぎにこれらの特異な現象の防止に環状ヒーター採用のボイラーが有効であることを述べる。筆者らが考案したボイラーには,底部にヒーターがまったく存在せず,ボイラーの周囲の液面より少し高い位置に帯状のヒーターが取り付けられている。このような加熱方法を採用すると,液体の蒸発量が多くなるにつれて,ボイラー内の液体はぐるぐると円周方向に回転するようになり,ちょうど攪拌装置を用いたときのような状況を呈する。最後に,この研究にまつわる筆者の二,三の思い出についても紹介する。
著者
中原 晧
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.184-188, 1994-04-20 (Released:2009-08-07)
参考文献数
8
被引用文献数
1

軟体動物の貝殻は炭酸カルシウムの結晶(アラレ石または方解石)と小量の有機質で構成されている。個々の結晶の形は,真珠層では板状のアラレ石,交差板構造では細長い柱状のアラレ石などさまざまである。貝殻はその内面の一定部分で成長する。この成長表面は変化に富んだ微細形態を示す。特に真珠層では二枚貝と巻貝で著しい差がある。また断面や切片の観察を加えれば,内部の構造とその形成過程を知ることができる。
著者
野副 尚一
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.131-137, 1990-03-01 (Released:2009-11-11)
参考文献数
19
被引用文献数
1 1

ステップのある金属単結晶表面上の反応特性を金属担持触媒のモデルとしての側面を念頭に置いて論じた。金属担持触媒で, 金属の粒径を変えたときに見られる反応性の変化が, 金属微粒子上のステップやキンクサイトの密度に密接に関連すること, 更に, ステップのある単結晶表面自身を触媒として用いることにより, 金属触媒反応の本質的理解が得られることを説明した。次いで, ステップやキンクサイトがテラスとは異なる反応性を持つことを今迄に得られた実験結果により示した。この様なステップやキンクの存在が吸着や脱離の過程に大きな影響を与えることをステップのある白金単結晶からのCOの昇温脱離スペクトルやステップのあるニッケル単結晶上へのH2の付着確率の実験例により示した。ステップのある高指数面には, ステップとテラスの2種類のサイトが存在する。この不均一性を用いて, テラスサイト上での吸着分子の移動速度が決定出来る。又, ステップサイトを異種原子により修飾すると, 表面反応に対するステップサイトの役割を明確に示すことが出来る。この様なステップやキンクサイトの反応性の差異は触媒反応ばかりでなく, 薄膜合成でも重要な意味を持つ。

1 0 0 0 OA 氷表面の滑り

著者
対馬 勝年
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.10, no.11, pp.941-943, 1989-12-20 (Released:2009-08-07)
参考文献数
13

氷の滑りの関与する身辺の問題と,各種の氷の摩擦説を紹介し,最後に氷の摩擦に関する最新の話題について述べた。
著者
酒井 明
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.20, no.8, pp.554-562, 1999-08-10 (Released:2009-08-07)
参考文献数
43
被引用文献数
2 2

When the contact size becomes comparable to electron Fermi wavelength, the electron transport through such a small point contact shows various quantum phenomena. Quantization of conductance is a marked example of such quantum effects. In the case of metal contacts, one has to fabricate atom-sized contacts for observing the quantized conductance. However, thanks to recent developments in nanotechnology, it is now possible to investigate experimentally some properties of quantized conductance in various metallic nanocontacts. In this article, I will give a brief survey of previous studies of quantized conductance in metal nanocontacts. Since this field is relatively new, many aspects of quantized conductance still remain to be identified.
著者
阿久津 典子 阿久津 泰弘 山本 隆夫
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.20, no.12, pp.837-844, 1999-12-10 (Released:2009-08-07)
参考文献数
69

We present a highly reliable statistical mechanical approach to calculate step-related quantities on the vicinal surface, which is comprised of the imaginary path-weight random walk method and the numerical renormalization group method. We applied the method to the studies of Si(001), Si(111) 7×7 and Si(111) 1×1 surfaces. From the effective kink energy, we obtain anisotropic step tension, step stiffness, equilibrium island shape, and step interaction coefficient, which allows quantitative comparison with experiments.
著者
井口 家成
出版者
The Surface Science Society of Japan
雑誌
表面科学 (ISSN:03885321)
巻号頁・発行日
vol.10, no.4, pp.277-283, 1989-05-20 (Released:2009-11-11)
参考文献数
22

The present status of Josephson effect and tunnel effect of high Tc oxide superconductors is reviewed. In the beginning, the concepts for Josephson and tunnel effects are introduced. With respect to the Josephson effect, the properties of grain boundary junctions are discussed in detail, especially based on the observed current-voltage characteristics and the quantum interference effect. As for the tunnel experiment, a variety of data are presented and discussed in connection with the proposed theoretical models. Finally, the problems on the formation of an ideal Josephson tunnel junction are discussed.