著者
岸本 宗和 山本 哲楠
出版者
日本醸造協会
巻号頁・発行日
vol.112, no.11, pp.758-764, 2017 (Released:2018-03-23)

Cabernet SauvignonおよびMerlotの新梢伸長期に摘心と花穂の切除を行って得られる副梢果房について,果実品質および副梢果房を用いた赤ワインの成分組成について検討した。Cabernet SauvignonおよびMerlotの摘心摘房処理区の開花,着色開始,収穫の時期は対照区と比較して1ヶ月以上遅くなった。摘心摘房処理区の着色開始から収穫までの最高および最低気温の平均は対照区と比較して5.2-8.0℃低くなり,冷涼な秋にブドウの成熟を移行できることが示された。摘心摘房処理区の副梢果房は,対照区と比較して果皮アントシアニン含有量が2倍以上多く含まれ,醸造されたワインの色調が濃かった。副梢果房を用いる本栽培方法は,温暖化が進む我が国のブドウ栽培にとって温暖化対応技術の一つとして期待される。
著者
岸本 宗和 柳田 藤寿 横森 勝利
出版者
山梨大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2014-04-01

マスカット・ベーリーA(MBA)種赤ワインの品質向上を目的として、市販ワインにおけるγ-ラクトン類およびフラネオールの香気成分含有量を調査するとともに、γ-ラクトンの生成機構の解析およびワインの含有量に及ぼす醸造条件の影響について検討した。γ-ノナラクトンは、ブドウ品種間のリノール酸含有量の差異、発酵工程における果皮および種子の浸漬、ブドウの収穫時期および発酵に用いる酵母菌株の影響を受けて含有量が異なると推測される。さらに、新たに開発したMBAの副梢果房を用いる赤ワインの醸造方法は、γ-ノナラクトンおよびフラネオールの含有量を高め、ワイン品質の向上に有効であることを明らかにした。
著者
岸本 宗和 塩原 貫司 萩原 健一 今井 裕景 柳田 藤寿
出版者
Brewing Society of Japan
雑誌
日本醸造協会誌 (ISSN:09147314)
巻号頁・発行日
vol.107, no.12, pp.931-939, 2012 (Released:2017-12-18)
参考文献数
27

1.セミヨン種ワイン発酵醪および醸造設備から乳酸菌を分離し,そのリンゴ酸分解能を検討した。前期醪から分離された22菌株中の18菌株に,後期醪から分離された24菌株すべてに,醸造設備から分離された10菌株中の1菌株,合計 43菌株にリンゴ酸の分解能が認められた。2.16S rDNAのPCR-RFLP解析および塩基配列解析の結果から,前期醪から分離されたリンゴ酸分解能を有する乳酸菌は,Lb. plantarumに,後期醪から分離された乳酸菌はO. oeniに,ワイナリー醸造設備から分離された乳酸菌はP. pentosaceusに分類される可能性が極めて高いことが示された。3.リンゴ酸分解率に及ぼすpHの影響について検討したところ,前期醪から分離された09Se-A1-4株はpH 2.9の条件下においても90%以上の高いMLF能を有していた。4.セミヨン種ブドウを原料とする小規模試験醸造において,09Se-A1-4株は速やかにMLFを生起し,さらには,クエン酸の消費が少ない特徴を有する菌株であることが認められた。