- 著者
-
金野 俊太郎
大河内 博
勝見 尚也
緒方 裕子
片岡 淳
岸本 彩
岩本 康弘
反町 篤行
床次 眞司
- 出版者
- 公益社団法人 日本分析化学会
- 雑誌
- 分析化学 (ISSN:05251931)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.3, pp.163-174, 2017-03-05 (Released:2017-04-07)
- 参考文献数
- 18
- 被引用文献数
-
2
2012年より積雪期を除き1か月もしくは2か月ごと(2015年以降)に,福島県浪江町南津島の山林でスギと落葉広葉樹の生葉,落葉,表層土壌,底砂の放射性Cs濃度を調査した.福島市─浪江町間の走行サーベイでは,除染により空間線量率は急速に減衰したが,未除染の山林では物理的減衰と同程度であった.2014年以降,落葉広葉樹林では林床(落葉と表層土壌)で放射性Csは物理的減衰以上に減少していないが,スギ林では生葉と落葉で減少し,表層土壌に蓄積した.2014年までスギ落葉中放射性Csは降水による溶脱が顕著であった.2013年春季には放射性Csはスギ林よりも広葉樹林で表層土壌から深層に移行していたが,2015年冬季にはスギ林で深層への移行率が上回った.小川では放射性Csは小粒径の底砂に蓄積しており,一部は浮遊砂として流出するが,表層土壌に対する比は広葉樹林で2013年: 0.54,2015年: 0.29,スギ林で2013年: 1.4,2016年: 0.31と下がっており,森林に保持されていることが分かった.しかし,春季にはスギ雄花の輸送による放射性Csの生活圏への流出が懸念された.