著者
髙田 賢 大河内 博 緒方 裕子 栗島 望 原 宏 木村 園子ドロテア 高柳 正夫
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.49, no.1, pp.26-33, 2014-01-10 (Released:2014-07-18)
参考文献数
23

東京都心から約30 km離れた東京農工大学FM多摩丘陵(東京都八王子市)にある30 m観測タワーの7高度で、大気中酸性ガス (SO2、HNO3) とエアロゾル (SO42-、NO3-) の鉛直観測を行い、森林フィルター効果の検証を行った。酸性ガスの鉛直分布は高度の低下に伴う濃度減少が見られ、森林フィルター効果が確認された。酸性エアロゾルでは粒径によって鉛直分布が異なり、微小粒子領域で高度の低下に伴う濃度減少が見られた。樹冠上空 (30 m) と樹冠下部 (6 m) の大気中濃度を用いて、森林フィルターモデルを適用したところ、酸性ガスでは両者の濃度差と樹冠上空濃度との間に高い正の相関があり、樹冠捕捉率はSO2で0.55、HNO3で0.43と推計された。酸性エアロゾルは微小粒子領域で樹冠フィルターモデルが適用可能であり、樹冠捕捉率はSO42-で0.52、NO3-で0.45と推計された。
著者
五十嵐 康人 大河内 博 北 和之 石塚 正秀 吉田 尚弘 三上 正男 里村 雄彦 川島 洋人 田中 泰宙 関山 剛 眞木 貴史 山田 桂太 財前 祐二 足立 光司 中井 泉 山田 豊 宇谷 啓介 西口 講平 阿部 善也 三上 正男 羽田野 祐子 緒方 裕子 吉川 知里 青山 智夫 豊田 栄 服部 祥平 村上 茂樹 梶野 瑞王 新村 信雄 渡邊 明 長田 直之 谷田貝 亜紀代 牧 輝弥 佐藤 志彦
出版者
気象庁気象研究所
雑誌
新学術領域研究(研究領域提案型)
巻号頁・発行日
2012-06-28

初期の放射性Cs放出には従来想定されていた水溶性サブミクロン粒子に加え,直径数μmの不溶性粗大球状粒子が存在することを初めて明らかにした。典型的な里山では再飛散由来のCs濃度は,都市部での結果と異なり,夏季に上昇し,冬季には低かった。夏季のCs担体は大部分が生物由来であることを初めて見出した。放射性Csの再飛散簡略スキームを開発し,領域エアロゾル輸送モデルを用いて森林生態系からの生物学的粒子による再飛散,ならびに事故サイトから継続する一次漏えいも含め,フラックス定量化-収支解析を行った。その結果、他のプロセス同様、再飛散は、地表に沈着したCsの減少や移動にほとんど寄与しないことがわかった。
著者
藤田 雅俊 大河内 博 緒方 裕子 名古屋 俊士 皆巳 幸也
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.62, no.12, pp.1111-1116, 2013-12-05 (Released:2013-12-28)
参考文献数
26
被引用文献数
1

Rapid and sample preparation using stir bar sorptive extraction (SBSE), followed by high-performance liquid chromatography with fluorescence detection to determine polycyclic aromatic hydrocarbons (PAHs) in atmospheric water was studied. Applying the SBSE method to authentic atmospheric water samples revealed that rainwater in Shinjuku contained a 226 pM concentration of total PAHs, which was 10-times as much as that at Mt. Fuji, especially in a higher concentration of soluble PAHs. There was no seasonal variation of the concentration and composition of PAHs in rainwater at Shinjuku. Comparing the concentration of PAHs in rain, cloud, and dew water collected at the foot of Mt. Fuji, 5- and 6-rings PAHs were enriched in cloud water. This result suggests that cloud droplets could condense PAHs, especially high molecular weight PAHs.
著者
大河内 博 吉田 昇永 柳谷 奏明 新居田 恭弘 梅澤 直樹 板谷 庸平 緒方 裕子 勝見 尚也 高田 秀重
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2020
巻号頁・発行日
2020-03-13

1.はじめにプラスチック生産量は年々増加しており,総生産量は1950年には年間200万トンであったが,2012年には3億トン,2050年には400億トンに達すると推計されている(Zalasiewicz, et al., 2016).その結果,河川を通じて大量の海洋ブラスチックゴミが発生している.ブラスチックゴミのうち,直径5 mm以下のプラスチック片の総称であるマイクロプラスチック(microplastics,; MPs)は,海洋生物が餌と誤認して摂食する物理的障害とともに,プラスチック添加剤や環境中で表面に吸着した有害有機化合物が体内に移行して生体に影響を与えることが懸念されている.2.大気中マイクロプラスチックの現状 最近では河川,水道水,ペットボトル,道路粉塵,室内空気でもMPsが検出されている.米国の推計によると,MPsが体内に取り込まれる経路は食物と呼吸が同程度でそれぞれ年間6万個程度,ペットボトル水から年間9万個を摂取している(Cox et al. , 2019).ただし,大気中マイクロプラスチック(Airborne microplastics; AMPs)の計測例は限られており,その実態はよく分かっていない.AMPsに関する先行研究はフランス・パリ郊外(Dris et al., 2016, 2017)や中国・広東省(Cai et al., 2017)で行われている.ただし,大部分は大気エアロゾルではなく,フォールアウトである.都市部におけるAMPsの形状は繊維状が多く,フィルム状,破片状,発泡体は少ない.同定されている主要材質はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリエチレンテレフタレートである(Dris et al., 2016, 2017; Cai et al., 2017, Liu et al., 2019).大気エアロゾル中AMPsの報告例は数例に限られるが,パリ(フランス)では室内空気で1 – 60 本/m3の繊維が存在しており,その66 %がセルロースなどの天然繊維である(Dris et al., 2017).一方,屋外空気では0.3 – 1.5 本/m3(50 – 1650 µm)の繊維が浮遊している.イラン南岸部アサルイエの都市大気でも大部分は繊維であり,空気では0.3 – 1.1 本/m3(2 -–100 µm)であるが,天然繊維か合成繊維(プラスチック)かは不明である(Abbasi et al., 2019).上海(中国)の都市大気では0 – 4.18 個/m3(23 – 9555 µm)であり,67 %が繊維状である(Liu et al., 2019a).また,同地点で0.05 – 0.07 個/m3(12 – 2191 µm)であり,43%が繊維状という報告もあり(Liu et al., 2019b),かなりばらつが大きい.AMPs研究はほとんどが都市大気に関するものであるが,最近になってマイクロプラスチックが大気を通じて輸送され,フランス・ピレネー山脈で365個/m2/日(65 µm以上)の沈着量であることが明らかにされた(Allen et al., 2019).この沈着量は都市部とほとんど変わらないことから,大気を通じたマイクロプラスチック汚染が広域的に起きていると可能性を示すものであり,NHKでも取り上げられた.また,山間部では都市部とプラスチック形状が大きく異なり,破片状,フィルム状AMPsが多く,繊維状AMPsは少ないことが明らかにされている.3.大気中マイクロプラスチック研究の課題現状では研究者が独自の方法で行った結果を報告しており,単純に比較することはできない.したがって,AMPsの採取法,前処理法,同定法に関する統一的手法開発が求められている.講演では, AMPs計測用の大気中エアロゾル捕集材,前処理法,計測手法に関する我々の検討結果について紹介するとともに,都市大気および自由対流圏大気中AMPsの実態について,その一端を紹介したい.
著者
金野 俊太郎 大河内 博 勝見 尚也 緒方 裕子 片岡 淳 岸本 彩 岩本 康弘 反町 篤行 床次 眞司
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.66, no.3, pp.163-174, 2017-03-05 (Released:2017-04-07)
参考文献数
18
被引用文献数
2

2012年より積雪期を除き1か月もしくは2か月ごと(2015年以降)に,福島県浪江町南津島の山林でスギと落葉広葉樹の生葉,落葉,表層土壌,底砂の放射性Cs濃度を調査した.福島市─浪江町間の走行サーベイでは,除染により空間線量率は急速に減衰したが,未除染の山林では物理的減衰と同程度であった.2014年以降,落葉広葉樹林では林床(落葉と表層土壌)で放射性Csは物理的減衰以上に減少していないが,スギ林では生葉と落葉で減少し,表層土壌に蓄積した.2014年までスギ落葉中放射性Csは降水による溶脱が顕著であった.2013年春季には放射性Csはスギ林よりも広葉樹林で表層土壌から深層に移行していたが,2015年冬季にはスギ林で深層への移行率が上回った.小川では放射性Csは小粒径の底砂に蓄積しており,一部は浮遊砂として流出するが,表層土壌に対する比は広葉樹林で2013年: 0.54,2015年: 0.29,スギ林で2013年: 1.4,2016年: 0.31と下がっており,森林に保持されていることが分かった.しかし,春季にはスギ雄花の輸送による放射性Csの生活圏への流出が懸念された.
著者
金野 俊太郎 大河内 博 黒島 碩人 勝見 尚也 緒方 裕子 片岡 淳 岸本 彩 岩本 康弘 反町 篤行 床次 眞司
出版者
日本地球惑星科学連合
雑誌
JpGU-AGU Joint Meeting 2017
巻号頁・発行日
2017-03-10

2012 年より積雪期を除き 1 ヶ月もしくは 2 ヶ月毎(2015 年以降)に,浪江町南津島の山林でスギと落葉広葉樹の生葉,落葉,表層土壌,底砂の放射性Cs濃度を調査した.福島市-浪江町間の走行サーベイでは,除染により空間線量率は急速に減衰したが,未除染の山林では物理的減衰と同程度であった.2014 年以降,落葉広葉樹林では林床(落葉と表層土壌)で放射性Csは物理減衰以上に減少していないが,スギ林では生葉と落葉で減少し,表層土壌に蓄積した.2014 年までスギ落葉中放射性Csは降水による溶脱が顕著であった.2013 年春季には放射性Csはスギ林よりも広葉樹林で表層土壌から深層に移行していたが,2015 年冬季にはスギ林で深層への移行率が上回った.小川では放射性Csは小粒径の底砂に蓄積しており,一部は浮遊砂として流出するが,表層土壌に対する比は広葉樹林で2013 年:0.54,2015 年:0.29,スギ林で 2013 年:1.4,2016 年:0.31 と下がっており,森林に保持されていることが分かった.しかし,春季にはスギ雄花の輸送による放射性Csの生活圏への流出が懸念された.
著者
小林 由典 大河内 博 緒方 裕子 為近 和也 皆巳 幸也 名古屋 俊士
出版者
公益社団法人 大気環境学会
雑誌
大気環境学会誌 (ISSN:13414178)
巻号頁・発行日
vol.47, no.1, pp.33-44, 2012-01-10 (Released:2012-06-27)
参考文献数
32
被引用文献数
1

26種類のAVOCs(塩素化炭化水素17種、単環芳香族炭化水素6種類、二環芳香族炭化水素3種類)の大気および大気水相のサンプリングを、2007年から2010年まで富士山と新宿で行った。2010年における大気中AVOCs濃度は富士山頂で最も高く(7月の平均総濃度:11.6 ppbv、n=5)、新宿(10~12月の平均総濃度:7.9 ppbv、n=52)、富士山南東麓(7月の平均総濃度:6.8 ppbv、n=9)の順であった。富士山頂における単環芳香族炭化水素(MAHs)の大気中濃度は都市域の新宿や国内外の高高度観測地点に比べて異常に高く、局地的な影響を受けている可能性がある。一方、2010年における大気水相中AVOCs濃度は富士山南東麓の雨水で15.8 nM(n=8)、富士山頂の雲水で15.7 nM(n=19)であり、新宿の露水で5.33 nM(n=15)、雨水で3.36 nM(n=30)であった。富士山における大気水相にはAVOCsが高濃度に含まれており、とくに塩素化炭化水素(CHs)は富士山南東麓の雨水および富士山頂の雲水ともにヘンリー則からの予測値以上に高濃縮されていた。大気水相へのAVOCsの高濃縮は大気中濃度、気温、各AVOCsの疎水性だけでは説明ができず、大気水相中の共存物質の影響が大きいものと推測された。
著者
緒方 裕子
出版者
熊本県立大学
雑誌
特別研究員奨励費
巻号頁・発行日
2009

黄砂粒子に含まれる鉄成分の海水への溶解性について検討を行った。これまでの研究により、水透析法によって黄砂粒子中のFeが溶解する粒子の存在が確認された。そこで、実際に海水へ沈着した場合の溶解性を調べるために、人工海水を用いて個別粒子におけるFeの溶解性を調べた。純水への溶解性と比較するため、同一黄砂イベント時に採取した黄砂粒子を用いて、海水透析、水透析における溶解性を比較した。走査電子顕微鏡とEDX(エネルギー分散型X線)分析器を用いて個別粒子分析を行い、海水透析法と水透析法を用いて溶解性成分を除去し、透析前後の相対重量比を比較した。その結果、海水、純水の両方において、透析前後でFeの溶解性はほとんど確認されなかった。水透析においてFeの溶解性が確認された粒子と比較した結果、透析前の黄砂粒子の組成が異なっていた。これらの結果から、黄砂粒子に含まれるFeの溶解性について、黄砂イベントごとに異なっている事が示された。Fe溶解性の変化は、(1)長距離輸送過程における硫黄化合物質との混合、(2)黄砂粒子の鉱物組成、(3)黄砂粒子の粒径、(4)黄砂粒子の濃度、などにより異なると考えられる。また、Ca,Mgの溶解性が海水と純水で異なっていた。特にCaは水にほとんど溶解したが、海水には溶解しないものが見られた。海水透析後に含まれていたCaは非水溶性であったことから、これらの相違は海水透析による変化であるといえる。従って、海水透析により黄砂粒子中のCa及びMgにおいて、溶解性が変化することが示唆された。Feについては海水及び純粋の両方でほとんど溶解しなかったことから、今後さらに様々なケースで採取された粒子の溶解性を調べる必要がある。