著者
峠岡 理沙
出版者
公益社団法人 日本皮膚科学会
雑誌
日本皮膚科学会雑誌 (ISSN:0021499X)
巻号頁・発行日
vol.131, no.3, pp.499-504, 2021-03-20 (Released:2021-03-20)
参考文献数
19

食物アレルギーは経口摂取による消化管での感作が主体であると考えられてきたが,近年,皮膚を介してアレルゲンが侵入する経皮感作が注目されている.化粧品は皮膚の汚れを除去し,乾燥を防ぎ,外的刺激から皮膚を保護する働きを有している.その一方で,化粧品に含まれる食物由来成分あるいは食品と共通する成分により経皮感作が生じ,その食物を摂食し,アレルギー症状が出現した症例が報告されている.食物アレルギーの症例を診察する際には,化粧品による経皮感作によって発症した可能性を念頭に置いておく必要がある.
著者
金丸 麻衣 峠岡 理沙 山里 志穂 堀田 恵理 益田 浩司 加藤 則人
出版者
日本皮膚科学会大阪地方会・日本皮膚科学会京滋地方会
雑誌
皮膚の科学 (ISSN:13471813)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.38-41, 2019 (Released:2019-08-13)
参考文献数
13

20歳代,女性。両上下眼瞼の紅斑を主訴に当科を受診した。患者はマスカラを日常的に使用していた。使用していた各種化粧品,外用薬,点眼薬,およびジャパニーズスタンダードアレルゲンによるパッチテストを施行したところ,マスカラ,フラジオマイシン,ペルーバルサム,ロジン,香料ミックスが陽性となった。マスカラの成分別パッチテストを行ったところ,カルナウバロウが陽性となった。カルナウバロウは化粧品や各種ワックス製品に含まれる他,食品や医薬品の添加物として用いられるが,接触皮膚炎の報告は非常に少ない。カルナウバロウに含まれるケイ皮酸がペルーバルサムと香料ミックスとも共通することから,マスカラに含まれたカルナウバロウ中のケイ皮酸によってアレルギー性接触皮膚炎を発症した可能性を考えた。また,外用薬に含まれた硫酸フラジオマイシンに対するアレルギー性接触皮膚炎も合併していた。パッチテストでロジンにも陽性を示し,香料アレルギーの可能性が示唆された。 (皮膚の科学,18 : 38-41, 2019)
著者
上田 幸子 服部 淳子 益田 浩司 加藤 則人 佐々木 和実 峠岡 理沙
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.316-321, 2017-10-31 (Released:2017-12-07)
参考文献数
10

35歳, 女性。初診の1年前より, まつ毛エクステンション専門店にて, 1ヵ月ごとに施術を受けていた。初診の1ヵ月前, 施術後に両眼瞼の腫脹が出現したが, 数日で軽快した。初診2週間前, 左側のみ施術を受けたところ, 翌日左上眼瞼の紅斑腫脹と流涙が出現し, 精査を希望して当科を受診した。施術の際に使用した洗浄液や接着剤などの製品と, ジャパニーズスタンダードアレルゲンおよびアクリル樹脂シリーズアレルゲンを用いてパッチテストを行ったところ, 人工まつ毛の接着剤, 硫酸ニッケル, ラノリンアルコールで陽性を示した。さらに接着剤の成分でのパッチテストを施行し, 主成分であるエチルシアノアクリレート (ECA) で陽性であった。今回使用した物品に硫酸ニッケル, ラノリンアルコールは含まれておらず, ECAによる接触皮膚炎と診断し, ECAの使用を避けるように指導した。その後, 皮疹の再燃はない。