著者
木村 友香 加藤 敦子
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.158-164, 2017-04-30 (Released:2017-06-30)
参考文献数
25

22歳, 男性。初診の2年前に寿司屋に就職し, 生の魚介類を扱うようになった。1ヵ月前に生のアワビ, クルマエビとアカエビを調理中に手に瘙痒感を伴う発赤が生じ, その後全身の瘙痒感, 呼吸困難感を訴え救急搬送された。その後も仕事を継続し, アワビとクルマエビを調理した際には, 時折手の瘙痒感や咳嗽を自覚する。アワビとクルマエビはいつも同時に扱うという。精査目的に当科初診した。血液検査ではアサリ, カキとホタテの特異的IgEがクラス2であった。プリックテストを施行し, 生のアワビで強陽性, 加熱したアワビ, 生のクルマエビ, 生のタコで陽性であった。アワビのプリックテスト中, 軽度の呼吸困難感が出現したが, 5分ほどで自然に軽快した。また, 生と加熱したアカエビを含むほかの各種魚介は陰性であった。タコは接触しても摂取しても症状は生じない。以上より, 生のクルマエビに対する接触蕁麻疹を合併したアワビによる接触蕁麻疹症候群と診断した。
著者
西岡 和恵 小泉 明子 瀧田 祐子 佐々木 和実
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.10, no.1, pp.35-46, 2016-01-31 (Released:2016-04-28)
参考文献数
10

症例1:65歳,男性。冷感タオル接触の頚部から体幹前面に瘙痒性紅色皮疹。貼布試験結果からは冷感タオルに含まれていたメチルクロロイソチアゾリノン(以下MCI)によるアレルギー性接触皮膚炎で,メチルイソチアゾリノン(以下MI),オクチルイソチアゾリンオン(以下OIT)に交差感作なし。症例2:53歳,女性。4ヵ月前より顔面に瘙痒性紅色皮疹。貼布試験結果からは美容液マスクに含まれていたMIによるアレルギー性接触皮膚炎で,MCI,OITに交差感作あり。症例3:53歳,女性。3ヵ月前から顔面,頭部の瘙痒性紅色皮疹。皮膚炎軽快後,美容液マスクを使用し再発。パッチテスト結果からは美容液マスクに含まれていたMIによるアレルギー性接触皮膚炎でMCIに交差感作あり。症例4:60歳,女性。4ヵ月前より顔面に瘙痒性紅色皮疹。貼布試験結果からは美容液マスク,化粧水に含まれていたMIによるアレルギー性接触皮膚炎。
著者
田中 博之 有山 智博 石井 敏浩
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.195-201, 2016-07-30 (Released:2016-09-01)
参考文献数
22

日本における薬剤性光線過敏症の発症状況を把握する目的で,日本の有害事象自発報告データベース(JADER)を用いて薬剤性光線過敏症症例の調査を行った。 JADERに登録された症例のうち,“光線過敏性反応”,“日光皮膚炎”,“光線性皮膚症”および“光線性口唇炎”が報告された症例を対象とし,患者背景,使用薬剤,発症日,転帰を解析した。 総報告件数は293件(男性 : 160件,女性 : 133件)であり,年齢は60歳代が75件,70歳代が83件と高齢者が多かった。被疑薬はロサルタンカリウム・ヒドロクロロチアジドが72件と最も多く,次いでケトプロフェンが25件であった。発症月は4~8月に集中する傾向があった。多くは回復または軽快するが,なんらかの障害が残る症例も確認された。 本調査より,薬剤性光線過敏症の発症状況が明らかとなった。これらの知見は薬剤性光線過敏症の予防や治療の一助となると考えられる。
著者
上田 幸子 服部 淳子 益田 浩司 加藤 則人 佐々木 和実 峠岡 理沙
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.11, no.4, pp.316-321, 2017-10-31 (Released:2017-12-07)
参考文献数
10

35歳, 女性。初診の1年前より, まつ毛エクステンション専門店にて, 1ヵ月ごとに施術を受けていた。初診の1ヵ月前, 施術後に両眼瞼の腫脹が出現したが, 数日で軽快した。初診2週間前, 左側のみ施術を受けたところ, 翌日左上眼瞼の紅斑腫脹と流涙が出現し, 精査を希望して当科を受診した。施術の際に使用した洗浄液や接着剤などの製品と, ジャパニーズスタンダードアレルゲンおよびアクリル樹脂シリーズアレルゲンを用いてパッチテストを行ったところ, 人工まつ毛の接着剤, 硫酸ニッケル, ラノリンアルコールで陽性を示した。さらに接着剤の成分でのパッチテストを施行し, 主成分であるエチルシアノアクリレート (ECA) で陽性であった。今回使用した物品に硫酸ニッケル, ラノリンアルコールは含まれておらず, ECAによる接触皮膚炎と診断し, ECAの使用を避けるように指導した。その後, 皮疹の再燃はない。
著者
篠田 純子 松倉 節子 久田 恭子 守田 亜希子 中村 和子 山川 有子 相原 道子 蒲原 毅
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.10, no.3, pp.225-231, 2016-07-30 (Released:2016-09-01)
参考文献数
12

柑橘類によるアレルギーの4例を経験した。すべて柑橘類単独でなく,他の果物野菜のoral allergy syndromeを伴っていた。感作花粉はさまざまで,4例中スギが3例,シラカンバ・ハンノキは2例,イネ科花粉は1例,ほかにブタクサ1例,ヨモギ1例であった。プリックテストでは,施行した3例全例においてBet v2が陽性であったことから,プロフィリンの関与が強く示唆された。柑橘類アレルギー患者においてプロフィリン抗体陽性の場合,海外ではイネ科花粉感作の報告が多くみられるが,自験例ではイネ科花粉感作は1例のみであり,シラカンバ・ハンノキ花粉やヨモギ,ブタクサとの交叉反応の可能性が考えられた。また,スギ花粉は3例で陽性であったことや過去の報告から,スギとの交叉反応の可能性も否定できないと考えられた。また,1例については,花粉症はみられたものの,アナフィラキシー症状がみられ重篤であったことから,LTPの関与も否定できないと考えられた。
著者
白川 典子 藤本 和久 市山 進 小林 征洋 佐伯 秀久
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.11, no.1, pp.50-54, 2017-01-31 (Released:2017-02-28)
参考文献数
18

症例は21歳男性。3年前, サケのホイル焼きを摂食後, 全身に搔痒を伴う発疹が出現し, 呼吸苦をきたした。その後もハモで顔面腫脹・発疹・呼吸苦, タラで顔面腫脹・発疹, ウナギおよびサンマで口腔内違和感, アミノコラーゲン入り栄養ドリンクで膨疹が出現した。Prick to prick test ではウナギ (加熱) , アナゴ (加熱) , サンマ (生) が陽性だったが, サンマ以外の生魚は陰性であった。ELISA法によるアレルゲンの検索を行い, 魚類コラーゲンが原因抗原であると診断した。魚類コラーゲンアレルギー患者では, 生魚を用いたprick to prick test では偽陰性になることがあり注意を要する。また, コラーゲンは加熱によっても抗原性が低減化しない。さらに近年では, 魚類コラーゲンが栄養ドリンクや化粧品にも用いられている。ウナギ目の魚類による即時型アレルギーの報告は少なく, 検査方法および生活指導に注意を要する。
著者
川原 繁
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.203-209, 2017-07-31 (Released:2017-08-30)
参考文献数
22

外用療法は軽度から中等度の尋常性乾癬に対する基本的な治療法であり, ステロイドとビタミンD3外用剤が広く用いられてきた。ステロイド外用剤は速効性を示すが, 長期間の連用により皮膚萎縮, 毛細血管拡張, 毛包炎などの副作用を示す。また, ステロイド外用剤を大量に用いた場合, 中断により乾癬が膿疱化する場合もある。ビタミンD3外用剤は, ストロングクラスのステロイド外用剤と同等の効果を示し, 皮膚刺激感などの副作用は少ない。ビタミンD3外用剤の単独治療ではベリーストロング以上のステロイド外用剤に比べて効果が劣るため, 両者が併用されてきた。近年, ビタミンD3とステロイドの新しい配合剤が発売された。その臨床試験はビタミンD3とステロイドの単独使用よりも配合剤が有効であり, ステロイド外用剤の連用と比べて副反応が減少することを示した。ビタミンD3とステロイドの配合剤は軽度から中等度の乾癬に対する第一選択として推奨される。
著者
木村 友香 加藤 敦子
出版者
一般社団法人 日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会
雑誌
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会雑誌 (ISSN:18820123)
巻号頁・発行日
vol.11, no.2, pp.158-164, 2017

<p> 22歳, 男性。初診の2年前に寿司屋に就職し, 生の魚介類を扱うようになった。1ヵ月前に生のアワビ, クルマエビとアカエビを調理中に手に瘙痒感を伴う発赤が生じ, その後全身の瘙痒感, 呼吸困難感を訴え救急搬送された。その後も仕事を継続し, アワビとクルマエビを調理した際には, 時折手の瘙痒感や咳嗽を自覚する。アワビとクルマエビはいつも同時に扱うという。精査目的に当科初診した。血液検査ではアサリ, カキとホタテの特異的IgEがクラス2であった。プリックテストを施行し, 生のアワビで強陽性, 加熱したアワビ, 生のクルマエビ, 生のタコで陽性であった。アワビのプリックテスト中, 軽度の呼吸困難感が出現したが, 5分ほどで自然に軽快した。また, 生と加熱したアカエビを含むほかの各種魚介は陰性であった。タコは接触しても摂取しても症状は生じない。以上より, 生のクルマエビに対する接触蕁麻疹を合併したアワビによる接触蕁麻疹症候群と診断した。</p>