著者
伊集院 睦雄 近藤 公久 島内 晶 佐藤 眞一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第6回大会
巻号頁・発行日
pp.91, 2008 (Released:2008-11-10)

高齢者では若年者に比べてTOT現象の頻出することが知られており,その原因としてi) 加齢により語の検索機能がうまく働かなくなるというdecrement viewと,ii) 高齢者は単に語彙が豊富なためTOT状態に陥りやすいとするincremental-knowledge viewが提唱されている.本研究ではii) に注目し,同じ高齢者でも語彙数の違いにより,TOTの生起数に差が認められるか否かを検討した.健常高齢者をWAIS IIIの単語課題素点で二群(高語彙群15名,低語彙群15名)に分け,絵(高頻度語160枚,低頻度語160枚)の命名課題を実施し,TOTの生起数を比較した結果,対象者の語彙数の多さはTOTの生成数を増加させないが,語彙数の多い対象者のみ,単語の頻度が高い場合にTOTの生成数が減少した.本結果は,高齢者でTOTが増加する現象をincremental-knowledge viewでは単純に説明できないことを示唆する.