著者
坂本 修一 鈴木 陽一 天野 成昭 小澤 賢司 近藤 公久 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.54, no.12, pp.842-849, 1998-12-01
被引用文献数
62

単語了解度試験用の単語リストの構築にあたって, 日常会話の聴き取りも含めた音声聴取能力をより正確に評価することを目指すには, 単語の難易度を統制することが望ましい。また, 補聴器適合の評価などの臨床応用を考えたときには, 限定された単語数で, 音韻バランスがよく取れた単語リストを作成することが実用上重要である。本論文では, 難易度の指標として親密度を用いてこれを統制し, また語頭の音韻バランスだけではなく, 語中の音韻バランスも考慮した単語了解度試験用単語リストの作成手法を提案する。また, 実際にこの方法を用いて, 親密度を4段階にパラメータ化して統制した単語リストの構築を行った。この単語リストは, 1枚50単語からなり, 各親密度段階について各20枚, 計80枚のリストから構成されている。更に, リストの妥当性を確認するための聴取実験を行った結果, 単語了解度が親密度を変えることによって系統的に変化することが示された。
著者
天野 成昭 近藤 公久
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.44-50, 2000-08-30

NTT psycholinguistic databases "Lexical Properties of Japanese" were developed for the large number of Japanese words and characters. The databases contain word and character information such as familiarity, frequency of occurrence, appropriateness of accent, appropriateness of orthography, subjective complexity, and other important psycholinguistic properties. Words and characters satisfying multiple search conditions can be very efficiently obtained for stimuli in psycholinguistic experiments, which was impossible without the database in past days. The databases provide a basis for psycholinguistic research on Japanese.
著者
近藤 公久 神長 伸幸 馬塚 れい子 林 安紀子
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.107, no.10, pp.41-46, 2007-04-13
被引用文献数
1

本稿では,日本語の黙読過程におけるモーラ長の影響について検討するために行った眼球運動測定実験の結果を報告する.被験者が読んだ刺激文章は,それぞれ4行からなる24文章であった.刺激文章中に,解析対象とするターゲット語を各行の中央付近に配置した.ターゲット語は,2, 3, 4, 5モーラの漢字二文字単語であった.単語親密度,漢字の親密度や複雑度が,モーラ長条件間で均等となるようにターゲット語を選択した.各モーラ長のターゲット語が出現する行は刺激文間でカウンターバランスされた.被験者12名の読みの過程の眼球運動を記録した.その結果,モーラ長によるターゲット語を含む文節の初注視時間への有意な影響が確認された.また,ターゲット語(文節)のモーラ長は、ターゲット語の次の文節の初注視時間への有意な影響を与えていることが確認された.この結果は,音韻長や韻律的な特性が黙読時にも影響を及ぼしている証拠である.また,文の難易度および被験者の読みの速さによる違いについて考察した.
著者
天野 成昭 近藤 公久
出版者
日本音声学会
雑誌
音声研究 (ISSN:13428675)
巻号頁・発行日
vol.4, no.2, pp.44-50, 2000-08-30 (Released:2017-08-31)

NTT psycholinguistic databases "Lexical Properties of Japanese" were developed for the large number of Japanese words and characters. The databases contain word and character information such as familiarity, frequency of occurrence, appropriateness of accent, appropriateness of orthography, subjective complexity, and other important psycholinguistic properties. Words and characters satisfying multiple search conditions can be very efficiently obtained for stimuli in psycholinguistic experiments, which was impossible without the database in past days. The databases provide a basis for psycholinguistic research on Japanese.
著者
阪口 栄穂 内海 章 須佐見 憲史 近藤 公久 和田 健
出版者
一般社団法人映像情報メディア学会
雑誌
映像情報メディア学会技術報告 (ISSN:13426893)
巻号頁・発行日
vol.40, no.9, pp.5-8, 2016-03-01

人の注意を誘導し視覚的な気づきの誘発によって自動車運転などの人の行動を適切に支援するためには,注意誘導に加えて誘導による視覚的気づきの生起を検知する手段の実現が重要となる.本報告では,ディスプレイ上に表示した文字を探索する課題において注意対象に対する矩形枠の表示による誘導と,注意対象の動きと眼球運動の相関を利用した気づき検知について検討する.実験の結果,矩形枠表示による誘導効果および眼球運動を利用した気づき検知の有効性が示された.
著者
伊集院 睦雄 近藤 公久 島内 晶 佐藤 眞一
出版者
日本認知心理学会
雑誌
日本認知心理学会発表論文集 日本認知心理学会第6回大会
巻号頁・発行日
pp.91, 2008 (Released:2008-11-10)

高齢者では若年者に比べてTOT現象の頻出することが知られており,その原因としてi) 加齢により語の検索機能がうまく働かなくなるというdecrement viewと,ii) 高齢者は単に語彙が豊富なためTOT状態に陥りやすいとするincremental-knowledge viewが提唱されている.本研究ではii) に注目し,同じ高齢者でも語彙数の違いにより,TOTの生起数に差が認められるか否かを検討した.健常高齢者をWAIS IIIの単語課題素点で二群(高語彙群15名,低語彙群15名)に分け,絵(高頻度語160枚,低頻度語160枚)の命名課題を実施し,TOTの生起数を比較した結果,対象者の語彙数の多さはTOTの生成数を増加させないが,語彙数の多い対象者のみ,単語の頻度が高い場合にTOTの生成数が減少した.本結果は,高齢者でTOTが増加する現象をincremental-knowledge viewでは単純に説明できないことを示唆する.
著者
坂本 修一 天野 成昭 鈴木 陽一 近藤 公久 小澤 賢司 曽根 敏夫
出版者
一般社団法人 日本音響学会
雑誌
日本音響学会誌 (ISSN:03694232)
巻号頁・発行日
vol.60, no.7, pp.351-357, 2004-07-01 (Released:2017-06-02)
参考文献数
17
被引用文献数
2

親密度と音韻バランスを統制した単語リストを用いた単語了解度試験を実施し,モーラ位置ごとの正答率に及ぼす親密度の影響を調査した。その結果,試験語が実単語であることを被験者に教示しない場合でも,単語了解度に親密度の影響が見られ,更に,第1モーラの正答率は,低親密度単語では単音節明瞭度と同程度であるのに対し,高親密度単語では単音節明瞭度より高くなることが示された。本結果は,非単語の回答を許すような聴取実験を行う際にも,親密度が結果に影響を及ぼすため,試験単語の親密度の統制が必要であることを示唆する。
著者
近藤 公久 天野 成昭
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.100, no.335, pp.1-8, 2000-10-05
参考文献数
20

日本語の単語および文字の様々な特性値を集めたデータベース「日本語の語彙特性」を構築した。「日本語の語彙特性」の1-6巻[1, 2, 3, 4, 5, 6, ]には、新明解国語辞典[7]の見出し語約8万語に対する、単語親密度、単語表記の妥当性などと、JIS X 0208-1990[8]に規定される6, 847文字に対する、文字親密度、複雑度などが収録されている。また、「日本語の語彙特性」の7巻[9]には、1985年から1998年までの14年間に発行された朝日新聞中の単語および文字の出現頻度が収録されている。本稿では、本データベースに収録されている特性値の概略と特性間の関係を示すとともに、本データベースの有効性と問題点について述べる。
著者
筧 一彦 広瀬 友紀 渡邊 眞澄 近藤 公久
出版者
中京大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2010

人間の文理解過程において先行する文脈情報による予測が、後続する文の理解過程に与える影響及び文中の動詞特性の影響について検討した。実験の手法として、眼球運動測定装置によるVWP(VisualWorldParadigm)法や文完成課題などを用いた。刺激文として統語的構造に多義性を持つ文、語省略のある文、意味不整合語を含む文を使用した。その結果、先行情報の内容と後続の文処理との関係が種々明らかとなった。
著者
前田 英作 南 泰浩 堂坂 浩二 森 啓 近藤 公久
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会技術研究報告. TL, 思考と言語 (ISSN:09135685)
巻号頁・発行日
vol.106, no.296, pp.51-56, 2006-10-12

NTTコミュニケーション科学基礎研究所では,2005年より「環境知能」をテーマとした研究プロジェクトを進めている.このプロジェクトの目的は,音声処理,音響処理,言語処理,対話,視覚情報処理,探索,学習,ネットワークなどのコミュニケーションのための情報処理技術を有機的に統合することにあり,それによって実現される新たな生活様式の提案も視野に入れている.本稿では,この取り組みの狙いとこれまでの進展を紹介する.