著者
根路銘 安仁 大脇 哲洋 桑原 和代 新村 英士 嶽崎 俊郎
出版者
日本医学教育学会
雑誌
医学教育 (ISSN:03869644)
巻号頁・発行日
vol.44, no.6, pp.461-465, 2013-12-25 (Released:2015-07-06)
参考文献数
7
被引用文献数
2

医学部入学定員は平成19年より急速に増加しており多くを地域枠学生が占めている.過去の調査で「医師不足地域での従事」において,専門医取得は大きな要素であった.鹿児島県の地域枠は全国よりも3年間早く開始され来年度から後期研修が開始される.彼らが専門医も取得可能なキャリア計画を提示することは喫緊の課題であり現在の制度情報を元に検討した結果,専門医の取得が困難であった.本問題は鹿児島県だけの問題でなく,数年後全国の医学部の卒業生の約2割が地域枠学生であることを考えると全国的な問題であり,彼らが専門医取得困難である現状は改善しなければならない.そのためには,各方面からの取り組みが必要である.
著者
園田 俊郎 VERONESI Ric GOMEZ Luis H HARRINGTON W ZANINOVIC Vl HANCHARD Bar 屋敷 伸治 藤吉 利信 嶽崎 俊郎 三浦 智行 速水 正憲
出版者
鹿児島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

ジャマイカ、コロンビアおよび近隣諸国にはHTLV-IとHTLV-IIのフォーカスが局在し、ATLとHAM/TSPを多発させている。平成6年度調査研究では、キングストン(ジャマイカ)、カリ、ブエナベンツラ(コロンビア)、ラパス(ボリビア)をたずね、HTLV-I/II関連疾患の患者およびウイルスキャリアの有無の調査した。総計8名の患者があらたに発掘され、ATL患者2名、HAM/TSP患者5名、感染性皮膚炎(In fective dermatitis,ID)患者1名が今回の分析対象となった。これらの検体からリンパ球と血清を分離し、リンパ球は生細胞のまま凍結保存され用時解凍してHLA検査に供せられた。血清はHTLV-I/II抗体の保有状況検査に供せられた。HLAの民族特性を比較する対照として、既知HLAの日本人ATL患者、HAM/TSP患者ならびにアンデス高地先住民のHTLV-IキャリアのHLAハプロタイプが用いられた。ジャマイカでは黒人の感染性皮膚炎(ID)患者の検体が収集された。コロンビアでは黒人のATL、HAM/TSP患者の検体が収集された。ボリビアではアンデス先住民と白人の混血メスチソのHAM/TSP患者の検体が収集された。平成2年度に収集保存中のアンデス高地先住民インガ族のHTLV-Iキャリアの検体も対象とした。HLAハプロタイプは患者とその家族のHLAタイプから割り出された。ここでは、常法による血清型と近年開発のDNA型で分析した。このHLAハプロタイプによって、黒人、アンデスインデイオ、メスチソの患者と日本人患者の民族背景の異同を比較した。ここでは、HLAクラスIIのDNA型が有用であった。ジャマイカとコロンビアの黒人患者(ID、ATL、HAM/TSP)のHLAハプロタイプには、日本人のATL、HAM/TSPと共通なDRB1*DQB1*1302-0604,1101-0301,1502-0601,0403-0302,0802-0402と黒人患者に特異なDRB1*DQB1*07-0201,0407-0302が検出された。ボリビアの混血患者のHLAハプロタイプには日本人ATL/HTLV-IキャリアにみられるDRB1*DQB1*0901-0303と白人由来とおもわれるDRB1*DQB1*0301-0201が検出された。以上の結果からHTLV-I関連疾患の遺伝背景にpan-ethnicなものと黒人/モンゴロイドに特異な遺伝背景があり、それぞれの疾患単位をつくっていると思われる。一方、HTLV-IIキャリアの検体はコロンビア・オリノコ川流域の先住民グアヒボ族から採取された。そのHLAハプロタイプはDRB1*DQB1*1402-0302,1602-0301,0404-0302であり、上記のHTLV-Iキャリアと患者のHLAとは全くことなる遺伝背景をしめした。すなわち、HTLV-IとHTLV-IIお感染には民族の相互排他性がみとめられ、ウスルスと宿主の自然選択がおこっているが明らかになった。他方、ATLとHAM/TSPは同一種のHTLV-Iでおこるとされてきたが、両者の遺伝背景は異なりる。今回の研究でも、黒人ATLとHAM/TSPとモンゴロイドのそれらとはHLAハブロタイプに差異が認められた。すなわち、黒人の遺伝系統とモンゴロイド(日本人をふくむ)の遺伝系統があり、それぞれの疾病要因となっていることが明らかにされた。したがって、民族に特異的なHLAと共通なHLAの遺伝的多型を追求すれば、ATLとHAM/TSPの発症にかかわる宿主遺伝子の実体が明らかなるとおもわれる。