著者
園田 俊郎
出版者
公益社団法人 日本食品衛生学会
雑誌
食品衛生学雑誌 (ISSN:00156426)
巻号頁・発行日
vol.24, no.5, pp.507-508, 1983-10-05 (Released:2009-12-11)
被引用文献数
2 3
著者
田島 和雄 千葉 仁志 宝来 聰 園田 俊郎 妹尾 春樹
出版者
愛知県がんセンター
雑誌
基盤研究(A)
巻号頁・発行日
1999

ヒトT細胞白血病ウイルスI型(HTLV-I)は東南アジア地域の中でも南西日本で特異的に集積している。本研究の民族疫学的調査によりアジア大陸に由来する南米先住民族は、HTLVのウイルス学的亜型とリンパ球抗原の免疫遺伝学的特性から、アンデス群と他の低地群に大別でき、アンデス群は免疫遺伝学的背景が南西日本のHTLV-I保有者群と極めて類似することが明らかになった。南コロンビアからチリやアルゼンチン北部のアンデス山脈に居住する高地民族は日本人と同じHTLV-Iを有し、オリノコ川、アマゾン川、パタゴニアなど低地に広く分布する先住民族は日本人に見られないHTLV-II型を有する。両者はHLAのクラスI、II遺伝子からみても遺伝学的起源を異にする。さらに、チリ北部に埋蔵されている先住民族の先祖と考えられるミイラの骨髄組織から抽出したHTLV-IのLTR、Px遺伝子のクローニングに成功し、千五百年前のミイラのHTLV-Iとアンデス先住民族のHTLV-I、および日本のアイヌ人らのHTLV-Iなどが遺伝学的に近縁関係にあることを示した。一方、中国チベット自治区は政治的に不安定要素が多く、チベット族の血液を採取することは容易でなく、チベット族を対象とした科学的に有用な免疫遺伝学的情報を提供できる研究成果はこれまでなかった。本研究では壮大なチベット高原の中で特に周辺と隔離された秘境奥地に居住しているいくつかのチベット部族の協力を得て、チベット自治区の衛生庁や重慶市中国第三軍医大学の輸血部などと共同で、チベット高原の東部、西部の僻地に棲むチベット族から血液を採取することができた。血清検索によりチベット族はHTLVを保有しないがHBVに高率に感染しており、それらのサブタイプはタイや韓国で見られるC型がほとんどで、インドネシアなどで多く見られるB型は見られなかった。HBV感染者の国際的広がりや地域特異性を示す遺伝学的サブタイプについてはこれまでにも多くの研究成果が報告されているが、HBVのサブタイプから見るとチベット族はHTLV-Iを有さない中央アジアのモンゴロイド集団と判明した。

6 0 0 0 OA HLAとHTLV-I

著者
園田 俊郎 藤吉 利信 屋敷 伸治 李 洪川 楼 宏 レマ カロリーナ
出版者
日本ウイルス学会
雑誌
ウイルス (ISSN:00426857)
巻号頁・発行日
vol.50, no.1, pp.37-45, 2000-06-01 (Released:2010-03-12)
参考文献数
40
被引用文献数
3 3
著者
田島 和雄 MUNOZ Ivan NUNES Lautar CARTIER Luis 宝来 聡 渡辺 英伸 園田 俊郎 CARTIER Lui
出版者
愛知県がんセンター
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1995

アンデス先住民族(コロンビア南部からチリ北部に居住)には南西日本に多いヒト白血病ウイルス(HTLV-I)感染者が高頻度(5〜10%)に出現し、しかも彼らは南西日本人と類似したHLA遺伝子を有しており、両者の遺伝学的背景やがん罹患分布には類似性が見られ、両者の民族疫学的関連性について興味が持たれている。また、ペル-南部やチリ北部の砂漠地帯には現在でも数千体のミイラが比較的好条件で残存している。これら先住民族のミイラを保存しているサンミグエル博物館(チリ第1州のアリカ市)、サンペドロ博物館(チリ第2州)、イロ博物館(ペル-南部)の考古学者らの協力を得てミイラ150個体(アリカ市96体、サンペドロ市42体、イロ市12体)から組織(骨、および骨髄)を採取した。これらのミイラはC^<14>の判定により約8000年から500年前に住んでいた先住民族のものとされている。これらの検体を日本に持ち帰り、遺伝子のDNA断片の増幅方法(PCA法)により核の白血球抗原(HLA)とベータグロビンの遺伝子のDNA断片、およびミトコンドリアDNAの抽出を試みた。さらに、南太平洋地域のポリネシア人が定着してきたイ-スター島(チリ共和国所属)を訪問し、同島の先住民族であるラパヌイから132個体粉の血液(各30cc)を採取し、日本に持ち帰ってリンパ球と血漿を分離し、リンパ球の核からは各種遺伝子のDNAを検索し、血漿を用いてHTLV-Iの抗体を検索した。イ-スター島の132人のHTLV-I抗体を検索した結果、1人のHTLV-I感染者(58歳の女、抗体価はPA法により256倍、WB法によりp28、p24、p19、GD21などが陽性)を発見した。彼女はリンパ球の核DNAの特性から、パプアニューギニアの先住民に由来するものではなく、むしろアンデス先住民族に由来することが判明した。次に、アフカの73検体とサンペドロアタカマの14検体のミイラのDNA検索の結果、3検体からHLA-DRDQ遺伝子のDNA断片、4検体からβグロビン遺伝子のDNA断片、3検体からHTLV-IのプロウイルスDNAのpX遺伝子の断片がそれぞれ検出された。現在はそれらの抽出された遺伝子の塩基配列を同定中である。一方、ミトコンドリアのDNAについてはD-loop領域の遺伝子の検索が、チリ北部の3先住民族(アイマラ族、アタカマ族、ケチュア族)の110個体、およびアリカとサンペドロアタカマのミイラ46個体(32個体と14個体)について終了した。その中で最も古いミイラは約8000年前のチンチョロ族と言われており、新しいものでは500年前のインカ族が含まれている。それらの遺伝子の塩基配列の同定により各グループのミイラの遺伝学的特徴が明らかになってきた。その結果、言語学的に全く異なるアイマラ族とケチュア族との間には遺伝学的に差が見られなかった。また、ミイラ集団のミトコンドリアDNAにも現存の南米先住民族にみられる4つのクラスターが現れ、その分布特性は現先住民族とやや異なることも明らかになった。これらの遺伝学的な分析結果がさらに進めていくとモンゴロイド集団である南米先住民族と日本人を含むアジア民族の遺伝学的関連性、現存の先住民族とミイラとの人類学的つながり、さらに各時代のミイラ集団におけるDNA特性の経時間的変動、などが明らかになってくる。また、それらの結果と従来から得られている考古学的、人類学的情報とを総合的に比較検討していくことにより、南米モンゴロイドの移動史をより深く探っていくことも可能となる。今後も南米アンデス地域における同様の研究を進展させるため約2年の期間を設定し、すでに採取された検体の遺伝子解析、および新しく発掘されたミイラの検体採取につとめ、それらのDNA特性を明らかにしていきながら、アンデス先住民族と日本民族のDNAの比較研究により、民族疫学的、免疫遺伝学的、人類学的、考古学的に有用となる両者のDNA情報を構築していく。
著者
井形 昭弘 園田 俊郎 佐藤 栄一 長瀧 重信 秋山 伸一 納 光弘
出版者
鹿児島大学
雑誌
総合研究(A)
巻号頁・発行日
1988

ヒト・レトロウイルスHTLV-Iによって脊髄症HAM(HTLV-I-associated myelopathy)がおこることが井形、納らにより報告され、この分野に大きな進展をもたらした。2か年にわたる本研究により、多くの貴重な成果を上げることが出来た。すなわち、このHAMの病態が大きく解明されると同時に、HTLV-Iに関連した他の臓器障害の可能性が浮かび上がってきた。HAMウイルスの分子生物学的検索により、HAMとATLのウイルスは変異株ではなく全く同一のウイルスであることが明かとなった。しかしHAMではキャリアに比較してはるかに多量のプロウイルスゲノムを末梢リンパ球中に保有しているという特徴が明かとなった。またHAMリンパ球はHTLV-I抗原刺激に対し高応答を示す。これらのことは、ホスト側の体質に関連しており、HAMとATLにはそれぞれ特有のハプロタイプを有することがわかった。HAMの病態機序に関連して、本邦で既に13例の剖検が行われ、この分析により更に詳細な病理像が明らかにされた。また、HAM患者髄液、末梢血リンパ球由来T細胞株が樹立された。一方、HAM患者の臨床像の分析の結果、肺胞炎、関節症、筋炎、シェグレン症候群、ブドウ膜炎の合併率が異常に多いことが明かとなった。これがはたして、HTLV-Iウイルスが直接おこしているのか、それともHAMに於て自己免疫疾患をおこしやすい状況があるのか、今後に課題を残したままであるが、重大な進展といえよう。治療に関しても、リンパ球除去術プラズマフェレ-シス、エリスロマイシン、ミゾリビン、α-インタ-フェロンなど有効な薬剤が明らかにされた。
著者
園田 俊郎 VERONESI Ric GOMEZ Luis H HARRINGTON W ZANINOVIC Vl HANCHARD Bar 屋敷 伸治 藤吉 利信 嶽崎 俊郎 三浦 智行 速水 正憲
出版者
鹿児島大学
雑誌
国際学術研究
巻号頁・発行日
1994

ジャマイカ、コロンビアおよび近隣諸国にはHTLV-IとHTLV-IIのフォーカスが局在し、ATLとHAM/TSPを多発させている。平成6年度調査研究では、キングストン(ジャマイカ)、カリ、ブエナベンツラ(コロンビア)、ラパス(ボリビア)をたずね、HTLV-I/II関連疾患の患者およびウイルスキャリアの有無の調査した。総計8名の患者があらたに発掘され、ATL患者2名、HAM/TSP患者5名、感染性皮膚炎(In fective dermatitis,ID)患者1名が今回の分析対象となった。これらの検体からリンパ球と血清を分離し、リンパ球は生細胞のまま凍結保存され用時解凍してHLA検査に供せられた。血清はHTLV-I/II抗体の保有状況検査に供せられた。HLAの民族特性を比較する対照として、既知HLAの日本人ATL患者、HAM/TSP患者ならびにアンデス高地先住民のHTLV-IキャリアのHLAハプロタイプが用いられた。ジャマイカでは黒人の感染性皮膚炎(ID)患者の検体が収集された。コロンビアでは黒人のATL、HAM/TSP患者の検体が収集された。ボリビアではアンデス先住民と白人の混血メスチソのHAM/TSP患者の検体が収集された。平成2年度に収集保存中のアンデス高地先住民インガ族のHTLV-Iキャリアの検体も対象とした。HLAハプロタイプは患者とその家族のHLAタイプから割り出された。ここでは、常法による血清型と近年開発のDNA型で分析した。このHLAハプロタイプによって、黒人、アンデスインデイオ、メスチソの患者と日本人患者の民族背景の異同を比較した。ここでは、HLAクラスIIのDNA型が有用であった。ジャマイカとコロンビアの黒人患者(ID、ATL、HAM/TSP)のHLAハプロタイプには、日本人のATL、HAM/TSPと共通なDRB1*DQB1*1302-0604,1101-0301,1502-0601,0403-0302,0802-0402と黒人患者に特異なDRB1*DQB1*07-0201,0407-0302が検出された。ボリビアの混血患者のHLAハプロタイプには日本人ATL/HTLV-IキャリアにみられるDRB1*DQB1*0901-0303と白人由来とおもわれるDRB1*DQB1*0301-0201が検出された。以上の結果からHTLV-I関連疾患の遺伝背景にpan-ethnicなものと黒人/モンゴロイドに特異な遺伝背景があり、それぞれの疾患単位をつくっていると思われる。一方、HTLV-IIキャリアの検体はコロンビア・オリノコ川流域の先住民グアヒボ族から採取された。そのHLAハプロタイプはDRB1*DQB1*1402-0302,1602-0301,0404-0302であり、上記のHTLV-Iキャリアと患者のHLAとは全くことなる遺伝背景をしめした。すなわち、HTLV-IとHTLV-IIお感染には民族の相互排他性がみとめられ、ウスルスと宿主の自然選択がおこっているが明らかになった。他方、ATLとHAM/TSPは同一種のHTLV-Iでおこるとされてきたが、両者の遺伝背景は異なりる。今回の研究でも、黒人ATLとHAM/TSPとモンゴロイドのそれらとはHLAハブロタイプに差異が認められた。すなわち、黒人の遺伝系統とモンゴロイド(日本人をふくむ)の遺伝系統があり、それぞれの疾病要因となっていることが明らかにされた。したがって、民族に特異的なHLAと共通なHLAの遺伝的多型を追求すれば、ATLとHAM/TSPの発症にかかわる宿主遺伝子の実体が明らかなるとおもわれる。