著者
松本 達郎 村本 喜久雄 高橋 武美 山下 実 川下 由太郎
出版者
日本古生物学会
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
no.143, pp.463-"474-1", 1986-09-30

Neocrioceras属の模式種であるN. spinigerum (JIMBO)の性状が正しく理解されていない懸念があったので, 模式標本に加え, その後諸地域から採集された標本をも検討し, 同種の特徴を明示した。海外の専門家が属の区別に使えるとしている点(外側の肩の突起が対面か交互配列か)は, 個体により, また同一個体内の生長期により変異があることを具体的に示した。また成年期の住房も未成年期の殻と同様にクリオセラス型のすきまのある平面らせん巻きを続けていることを明らかにした。信頼し得る産地記録に基づくと, 本種は浦河統上部(おもにサントニアン)に産し, Sphenoceramus naumanni (Yokoyama)やS. nagaoi (Matsumoto et Ueda)を伴うことが多い。従来Neocrioceras属に入れられていた世界各地の諸種との比較を試み, 本種とかなり異なるものは他の属に移した方がよいことを論述した。
著者
松本 達郎 利光 誠一 川下 由太郎
出版者
PALAEONTOLOGICAL SOCIETY OF JAPAN
雑誌
日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
巻号頁・発行日
vol.1990, no.158, pp.439-458, 1990-06-30 (Released:2010-05-25)
参考文献数
31

本属は世界諸地域の上部白亜系に産し広く知られている。しかし私は次の3点が未解決であることに気付いた。これに対する研究結果を記す。(I)模式種Ammonites pseudogardeniの概念が不明確であった。今回後模式を指定して再定義した。外側部に短肋(時に小突起)があるのが本種の1特質である。(II)二型性の存否が問題であった。本邦産H. angustumについて殼口縁の保存されているM殼・m殼の好例を示し, 模式種やH. gardeniにおいても二型のあることを説いた。(III)本属の系統上の位置付けが未解決であった。本属における二型M・m殼の大きさの比とM殼の絶対値はPuzosiaのそれにほぼ匹敵するが, Desmocerasの場合(研究中)とは異なる。コニアシアンにキールは無いが殼形がHauericerasに似て狭い平板形で肋の発達の悪いPuzosiaの種, 他方キールがあり短肋がその両側にあるHauericerasの種が産する。さらに稀ではあるがチューロニアンに短肋が外面部だけにあり初生的のキールをもつ種(Puzosia serratocarinata)が最近報告されている。また個体発生をたどるとHauericerasの幼殼はキールを欠きその形質はPuzosiaの幼殼と酷似する。これらの諸事実から, Hauericerasの初期の種はPuzosiaの中で殼形が挾い平板状で肋の発達が不十分な部類(subgroup)の種から由来したとみなされる。短肋や小突起は亜属H.(Hauericeras)では残存しているが, 亜属H.(Gardeniceras)では全く消失した。また亜科PuzosiinaeとHauericeratinaeとを併せて, 科Puzosiidaeとするのがよい。