- 著者
-
野田 雅之
村本 喜久雄
- 出版者
- 日本古生物学会
- 雑誌
- 日本古生物学會報告・紀事 新編 (ISSN:00310204)
- 巻号頁・発行日
- no.119, pp.388-"402-1", 1980-09-30
北海道の北西部を東西に流れる小平蘂川の中上流には上部白亜系チュロニアンの地層が広く露出しているが, この地域から採集された特異な形態をもつInoceramusについて述べる。本種は, 世界的に広く分布し, チュロニアン中部を代表するI. (I.) lamarckiに類似する点があり, とくに北シベリアYenisei河口低地のNasonovsk層(I. lamarcki帯)から産出したI. (I.) paralamarckiに似た点が多い。しかし, その不等殻性がそれほどいちじるしくなく, 両殻ともに成長軸の方向に極端に長くのびている点や, 膨らみがすこぶる大きく, さらに強く膨らんだ広い翼や強い装飾など相違する点が多いので, ここに新種としてInoceramus (Inoceramus) obiraensisの名のもとに記載した。研究にあたって, 従来の記載や研究の方法に加えて, 数量的に表わせる形質については補助的な手段として統計的な検討も試みた。この特異な種の日本での産出は珍しいので, 近縁種の分布などを手がかりとして, チュロニアン中期の古地理や, 本種の系統発生などについて若干の考察を付録で試みた。