著者
名取 通夫 土佐 寛順 田中 伸明 川俣 博嗣
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.3, pp.419-424, 1996-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
7

「朮」は大きく白朮と蒼朮に分類され, 白朮は利水・補剤として, 蒼朮は発汗・除湿剤として用いられてきた。しかし, 実際に白朮と蒼朮を入れ換えることにより, 自覚症状がいかに変化するかは検討されていない。今回我々は, 漢方方剤中の白朮と蒼朮を4週間ごとに入れ換えて処方検討することにより, 以下のことを明らかにした。1) 関節痛がある症例では蒼朮を用いた方が有効率が高い。2) 有効例では「飲みやすい」と答えた人が60%で,「飲みにくい」と答えた人はわずかに9%であり, 味覚が効果判定の一つの指標になり得る。
著者
川俣 博嗣 土佐 寛順 寺澤 捷年
出版者
社団法人日本東洋医学会
雑誌
日本東洋醫學雜誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.47, no.2, pp.253-260, 1996-09-20
被引用文献数
5 1

寝たきり老人に黄耆建中湯を投与したところ, 著明に日常生活動作 (ADL) の拡大を得た2症例を経験した。 症例1は76歳の女性。 くも膜下出血で約5ヵ月間の入院により, 寝たきりとなった。 入院時は両下肢に麻痺と廃用性萎縮を認め, 意欲の低下は著明であった。 証に随い小建中湯を投与したが, 効果がなかったため, 黄耆建中湯に転方。 徐々に意欲の上昇が得られ, 著明な ADL の拡大を得た。 症例2は86歳の女性。 腰椎圧迫骨折で1年間寝たきりの状態が続いた。 黄耆建中湯の投与で意欲の上昇が得られ, 積極的にリハビリテーションを取り組むようになった。 この結果, 座位が可能となり, 杖歩行で退院となった。 寝たきり老人の病態は, 虚労状態と考えられる。 気力・体力の低下した寝たきりの老人に対して, 本方で著効が得られたことは高齢者医療における漢方医学の寄与を具体的に示す一つの事例であると考え報告した。