著者
山野井 貴浩 小川 博久 川島 紀子
出版者
一般社団法人 日本理科教育学会
雑誌
理科教育学研究 (ISSN:13452614)
巻号頁・発行日
vol.63, no.1, pp.215-223, 2022-07-31 (Released:2022-07-31)
参考文献数
26

中学校理科における進化の学習では,脊椎動物は祖先を共有しながらも進化してきたことを理解させることが求められている。これまで進化のしくみや進化の定義に関する認識調査は中学生対象になされてきたが,祖先共有の認識についての調査は国際的にもほとんど行われていない。そこで本研究は,中学生の祖先共有の認識と他の進化認識との関係を明らかにするため,5つの質問群から成る質問紙を作成し,進化の学習を終えた中学生を対象に質問紙調査を行った。欠損値を含んだ回答を除き,1175名の回答を用いて統計分析を行った。その結果,以下の3点が明らかとなった。1.ヒトとチンパンジーといった哺乳類どうしの祖先共有の認識は強いが,哺乳類と爬虫類および魚類の祖先共有の認識は弱いこと,2.祖先共有の認識と進化の道筋に関する図の選択に明確な関連は見られないこと,3.脊椎動物は祖先を共有しながらも,ヒトに向かって進化していくという誤った進化観が形成されていること。今後,本研究で明らかとなった生徒の認識を踏まえた授業開発がなされることが期待される。