著者
川崎 哲
出版者
日本平和学会
雑誌
平和研究 (ISSN:24361054)
巻号頁・発行日
vol.57, pp.1-5, 2021 (Released:2022-01-31)

2021年1月に発効した核兵器禁止条約(TPNW)を作り出したのは、核兵器がもたらす非人道的な被害に着目した「人道アプローチ」の取り組みであった。赤十字国際委員会(ICRC)やオーストリアなど有志国政府が進めたこの取り組みを世界のNGOや被爆者らが後押ししてきた。これら市民社会が果たしてきた役割として挙げられるのは、第一に、核兵器の非人道性の認識を世界に広げたことである。広島・長崎の被爆の実相の証言に加え、核実験や原発事故の被害、さらに今日核兵器が使用された場合の想定も大いに議論された。第二に、条約起草への貢献である。当初、化学兵器禁止条約などを参考にしたモデル核兵器禁止条約が作られた、その後、対人地雷やクラスター弾の禁止条約における「規範の強化」という観点が重視された。第三に、各国政府への働きかけである。NGOが自国において、あるいは関連国際会議において各国代表に働きかけてきたことが、同条約の採択と発効につながった。今後の課題、とくに日本に関わる重要な課題としては、2022年3月に開かれる第一回締約国会議に向けて、①核被害者への援助と環境回復の課題について被爆国としての経験を生かすことや②核兵器の廃棄と検証の議論に関与することが挙げられ、さらに、③日本がこの条約に署名・批准するために必要な法的・政治的論点を提示することが求められる
著者
水口 聡 渡辺 久 川崎 哲郎
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.165-172, 2004

愛媛県のカーネーション農家における収穫・出荷の現状を把握し, 問題点を明確にするとともに,「蕾開花促進 (BAA)」と命名した蕾の開花速度の加速による開花促進処理法の出荷調節への適応性を検討した。愛媛県内の篤農家の現状を調査したところ, 母の日直前には低温貯蔵が行われ, 出荷本数は通常の2.8倍になっていた。年間出荷本数の14%にあたる多くの花が母の日用出荷に間に合わず蕾状態で圃場に残留していた。1℃および5℃における1週間の低温貯蔵は花弁のピンク色の鮮やかさを低下させ, 葉の色調を黄化させた。1℃で1週間貯蔵すると, 花弁に障害が発生した。5℃で1週間貯蔵すると, 満開時の花径が小さくなり, 花持ちが短くなった。BAAにより蕾段階から出荷適期に到るまでの日数が短縮できた。BAAによる花弁色調の変化はほとんどなく, 葉の緑色をより鮮やかにした。ステージ1から蕾開花促進させた場合, 花径が小さくなった。BAAに花持ち延長効果は認められなかった。これらのことより, 処理条件の改良は必要であるが, カーネーションの出荷調節法として, BAAはきわめて有効な技術となりうることが示唆された。