著者
佐々木 健 木谷 俊秀 江本 美昭 浜岡 尊
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.38-46, 1987

畜産廃棄物の再資源化と地域利用を目的として, 豚ふん尿のメタン発酵特性調査とバイオガスエンジン駆動試験を行った。35℃の単槽回分式メタン発酵で最大ガス発生速度, 950m<i>l</i>/<i>l</i>/日 (370mg/g-vs) を得, CH<sub>4</sub>濃度は58~76% (他はCO<sub>2</sub>) であった。連続発酵 (35℃) で有機物負荷が2.8~7.1g-vs/<i>l</i>/日の時, ガス発生 (840~1,150m<i>l</i>/<i>l</i>/日), CH<sub>4</sub>濃度 (64~72%) およびCOD<sub>cr</sub>除去率 (61~63%) がそれぞれ最大であった。CH<sub>4</sub>60%とCH<sub>4</sub>80%の等価混合ガスを燃料とし, 空燃比を調整して4サイクル点火式エンジン (550cc) を駆動し最高出力15PSを得た。500頭規模の豚舎を想定すると約13時間のバイオガス駆動が可能と推算された。
著者
川岸 卓司 松梨 夏季 水谷 孝一 若槻 尚斗
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設 = Journal of the Society of Agricultural Structures, Japan (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.45, no.1, pp.1-7, 2014-03

養豚農家において,呼吸器感染症の豚を早期に発見し,その拡散を防止することは大変重要である。現在,呼吸器感染症の検査は,各種抗体検査などで陰陽性を判別しているが,所要時間や費用を鑑みると頻繁に検査を行うことは困難である。そこで,本稿では,マイクロフォンアレイを用いて豚の咳・くしゃみ音を自動的に検出し,その発生位置を特定するシステムを提案する。提案手法を評価するため,標準サンプルに同一種の離乳期豚で湿潤状況が陰性な咳・くしゃみ音を使用し,同様の環境である豚舎にて咳・くしゃみ音の検知を行い,その発生位置の特定を行った。その結果,豚のくしゃみ音は30kHz以上の周波数を含み,ハイパスフィルタを用いた手法により,識別率は99.9%,位置測定率は85.7%で特定が可能であった。また,咳音は10-20kHzの周波数を含み,バンドパスフィルタを用いた手法により,識別率は99.6%,位置測定率は75.0%で特定が可能であった。これらの実験により,本手法の有効性が確認された。
著者
カタージェフ ティホミール 渡辺 兼五 東城 清秀 内ヶ崎 万蔵 藍 房和 ホワン バーニィ
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.47-56, 1996

環境を保全しながら農地の生産性を改善する手法として, 樹木を利用するアグロフォレストリ (AGROFORESTRY) が注目されている。これは, 土壌浸食や汚染を受けることが多い農地の利用形態として, 作物だけでなく短期間に樹木を栽培するもので, 経済的な観点から積極的な普及が期待されている。樹木を農地に移植することは重労働であり, 樹木苗の全自動移植機の開発が急務となっている。<br>本研究の目的は, 野菜移植のために開発されたエアプルーニング育苗方法を樹木の育苗に応用し, 生長に及ぼす影響および派生する問題点について検討することである。<br>実験ではセル深さの異なる育苗トレイ (深さ40, 70, 140mm) を用いて, それぞれについてエアプルーニング, 部分エアプルーニング, エアプルーニングなしの条件で育苗を行った。ファイトトロンにおいて夜間と昼間の温度を17℃, 28℃そして湿度を95%, 65%に設定し, ユーカリと赤マツを育苗した。ユーカリは播種後20日で出芽して, 出芽率は85%であったが, 赤マツは播種後24日で出芽して, 出芽率95%であった。出芽に対してはエアプルーニング育苗の影響はセル深さ40mm以外の実験区ではみられなかった。これは40mmより深いセルでは根が底に届く前に発芽が行われたためと考えられた。<br>ユーカリと赤マツの苗はエアプルーニングを施した全実験区で健苗となった。100mmの草丈に達したのはユーカリが4週間目で, 赤マツが24週間目であった。樹木の生長について統計処理を行った結果, 出芽で差が生じた深さ40mmトレイの実験区も, 移植時までに他の実験区とほぼ同様の生長となることが示された。
著者
水口 聡 渡辺 久 川崎 哲郎
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.35, no.3, pp.165-172, 2004

愛媛県のカーネーション農家における収穫・出荷の現状を把握し, 問題点を明確にするとともに,「蕾開花促進 (BAA)」と命名した蕾の開花速度の加速による開花促進処理法の出荷調節への適応性を検討した。愛媛県内の篤農家の現状を調査したところ, 母の日直前には低温貯蔵が行われ, 出荷本数は通常の2.8倍になっていた。年間出荷本数の14%にあたる多くの花が母の日用出荷に間に合わず蕾状態で圃場に残留していた。1℃および5℃における1週間の低温貯蔵は花弁のピンク色の鮮やかさを低下させ, 葉の色調を黄化させた。1℃で1週間貯蔵すると, 花弁に障害が発生した。5℃で1週間貯蔵すると, 満開時の花径が小さくなり, 花持ちが短くなった。BAAにより蕾段階から出荷適期に到るまでの日数が短縮できた。BAAによる花弁色調の変化はほとんどなく, 葉の緑色をより鮮やかにした。ステージ1から蕾開花促進させた場合, 花径が小さくなった。BAAに花持ち延長効果は認められなかった。これらのことより, 処理条件の改良は必要であるが, カーネーションの出荷調節法として, BAAはきわめて有効な技術となりうることが示唆された。
著者
青野 忠勝 仁科 弘重 渡部 憲幸
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.231-239, 1994

高床式開放鶏舎における除糞機の開発に取組み, ローラ型ガイドを有する, 無人走行が可能な自走式除糞機を製作した。試作除糞機は管理機がベースであり, 走行速度の低下を目的として, 機関の動力取り出し軸 (PTO軸) に装着するプーリの改良も試みた。<br>そして, タイヤの種類・機関回転数・シフトレバーポジションの違いによるけん引力を測定し, 既存プーリの場合と比較検討した。さらに, 試作除糞機によって除糞作業を行い, 走行速度との関係も含めて, 除糞効率を求めた。<br>その結果, 試作除糞機は, 除糞作業に十分なけん引力を示し, また, 除糞効率も70~100%と高い値が得られたことから, 実用上十分な性能を有すると判断された。
著者
カタージェフ ティホミール 渡辺 兼五 東城 清秀 内ヶ崎 万蔵 藍 房和 ホゥアング バーニ
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設
巻号頁・発行日
vol.25, no.4, pp.183-189, 1995

空気整根育苗を目的にした底面開放型トレイを供試して苗ブロックを下方へ吸引移植する場合の抜き取りエネルギについて検討した。ピートモスと土を混合した苗ブロックの充填密度および含水率をそれぞれ2水準設定して試験を行った。第1試験は育苗トレイに培土を充填した直後に植生なしで行い, 第2試験は播種後40日間育苗したキャベツ苗ブロックについて行った。テーパのないトレイセルの抜き取りエネルギはテーパのあるトレイセルより12倍のエネルギを消費した。
著者
蒋 偉忠 北村 豊 石束 宣明 リャン トン
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設
巻号頁・発行日
vol.32, no.2, pp.85-92, 2001

本研究では, 無希釈あるいはわずかに希釈した有機廃棄物のドライメタン発酵技術を確立するため, 回転ドラム発酵システム (RDFS) を開発し, その特性を明らかにした。RDFSの基質としてわずかに希釈した牛糞を用い, RDFSによりリアクタ内容物の混合状態が改善されるようにした。ドライメタン発酵システムの評価は有機酸とメタンの生成状況によって行い, pHやVA, メタン含有量等のパラメータを検討した。さらに, 汚泥-牛糞比(1:1, 1:2, 1:3, 1:5) や攪拌時間 (30, 60, 120, 240分/日) 等の影響を明らかにすることによってRDFS運転条件を決定した。
著者
森山 英樹 佐瀬 勘紀 小綿 寿志 石井 雅久
出版者
農業施設学会
雑誌
農業施設 (ISSN:03888517)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.199-212, 2003-12-25
参考文献数
16
被引用文献数
4

2002年10月1日20時半頃に、台風0221が神奈川県川崎市付近に上陸した。関東地方太平洋側を北上した本台風は、中心付近の最大風速が35m/sの、関東地方における戦後最大級の強さの台風であった。そのため、台風の危険半円に位置した千葉県東総地方および茨城県鹿行地方では、パイプハウスを中心とする多くの園芸施設が倒壊等の被害を受けた。今後の台風対策に資するために、被災した園芸施設7事例に関する現地調査を行った。また調査結果の整理・被災園芸施設の構造解析・接合部および基礎の耐風性の算出を行い、破壊メカニズムに関する考察を加えた。その結果、(1)南南東風を中心とする風速35m/s以上の風によって園芸施設の被災が生じたことを確認し、さらに事例毎に、(2)50m/sの風では基礎が浮き上がることと、さらに施工不良基礎では引き抜き耐力が70%以上低減すること、(3)基礎を現状よりも10cm深く埋設することにより50m/sの風でも浮き上がらなくなること、(4)斜材の設置されていない鉄骨補強パイプハウスの柱梁接合部は50m/sの風には耐えられないことを明らかにした。また、(5)風下側妻面の開放による施設内部の負圧増加が屋根を押しつぶそうとする荷重を増加させたとする破壊メカニズムの可能性を指摘し、(6)風上側に風の流れを大きく変化させる物体が存在する場合の園芸施設に適した風圧力算定方法の必要性について指摘した。