著者
川崎 美里 阿部 晶子 橋本 律夫
出版者
一般社団法人 日本高次脳機能障害学会
雑誌
高次脳機能研究 (旧 失語症研究) (ISSN:13484818)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.442-451, 2022-12-31 (Released:2023-01-17)
参考文献数
21

本研究の目的は, 左半側空間無視 (以下, 左 USN) 患者を対象に, 横書き文の改行位置による左無視性失読 (以下, 左 ND) の出現率および眼球運動の差を明らかにすることである。対象は左 USN 患者 5 名と健常者 18 名であった。課題は横書き文章の音読課題を用いた。課題文は改行位置を統制し, 語頭から始まる行 (以下, 語頭条件) と語中から始まる行 (以下, 語中条件) が半数ずつになるようにした。 改行時の左 ND は 5 名中 3 名に認められた。左 USN 患者においては, 左 ND がみられるか否かにかかわらず, return sweep (改行時に行末から行頭に向かうサッケード) の終了位置が行頭よりも右側にとどまった。著明な左 ND がみられた 1 名では, 語中条件よりも語頭条件において行頭文字の読み落としが多く, 語中条件よりも語頭条件の最左停留位置 (視線が最も左方に達した位置) がより右側であった。