- 著者
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下畑 享良
金澤 雅人
川村 邦雄
高橋 哲哉
西澤 正豊
- 出版者
- 日本脳循環代謝学会
- 雑誌
- 脳循環代謝(日本脳循環代謝学会機関誌) (ISSN:09159401)
- 巻号頁・発行日
- vol.26, no.2, pp.93-97, 2015 (Released:2015-08-07)
- 参考文献数
- 11
要旨 脳梗塞に対するtPA を用いた血栓溶解療法は,発症から4.5 時間を超えて行った場合,脳出血を合併するリスクが高くなる.脳出血合併症を防止する治療の開発は,予後の改善と,tPA 療法の治療可能時間域の延長をもたらす可能性がある.我々は,血管リモデリングに関与する血管内皮増殖因子(VEGF)やアンギオポイエチン1(Ang1)を標的とした血管保護療法の可能性について検討し,ラット脳塞栓モデルにおいて,① VEGF 抑制薬,および②組み換えAng1 の投与が脳出血合併症を防止し,予後を改善することを明らかにした.その後,知的財産権の確保,および米国ベンチャー企業との産学連携を行い,現在,臨床試験の実現を目指している.これまでの経験から,アカデミア研究者が,創薬研究の「死の谷」を乗り越えるためには,①動物実験の質の改善,②知的財産権の確保,③産学連携の推進が重要であると考えられた.