- 著者
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柏木 友太
鈴木 昭広
丹保 亜希仁
川田 大輔
西浦 猛
小北 直宏
藤田 智
- 出版者
- 一般社団法人 日本集中治療医学会
- 雑誌
- 日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.1, pp.43-47, 2016-01-01 (Released:2016-01-08)
- 参考文献数
- 10
- 被引用文献数
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Ia群抗不整脈薬シベンゾリンを含む処方薬を過量服用し,心停止を来した症例を経験したので報告する。症例は10歳代後半,男性。家族に処方されていたシベンゾリン100 mg 30錠,バルプロ酸200 mg 118錠,ブロチゾラム0.25 mg 28錠,イブプロフェン100 mg 34錠を自宅で服用した。内服から70分後に当院救命センターへ搬送された。心電図は完全右脚ブロック波形であったが当初循環は保たれていた。しかし,来院15分後より心室頻拍(ventricular tachycardia, VT)となり,やがてpulseless electrical activity(PEA)となった。心肺蘇生(cardiopulmonary resuscitation, CPR)に反応しないため経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support, PCPS)を導入した。ICU入室後,血漿交換を行い加療したところ徐々に心拍出量が増加し,第10病日に後遺症を残さず独歩退院となった。過量服薬によるIa群抗不整脈薬中毒は稀であるが,作用機序に基づく治療法を知っておく必要がある。重症例では急激な循環不全に至る可能性があり,機械的補助循環の導入を考慮した初療対応や適切な血液浄化法の選択が求められる。