著者
川田 美紀
出版者
環境社会学会
雑誌
環境社会学研究
巻号頁・発行日
no.12, pp.136-149, 2006-10-31

本稿は,ローカル・コモンズを分析の対象として,人びとと自然との問にどのような直接的な交流がなされているのか具体的に示すことを目的とする。それを示したうえで,自然を「保護」するために人びとはどのような規範をもっているのか検討する。具体的には,茨城県の霞ヶ浦周辺村落を事例として,1930〜50年頃の自然の共同利用を,空間・時間・属性・規制という4つの側面に整理して記述する。その結果明らかとなったことは,次の3点である。第1に,地域にはさまざまな資源の共同利用が重層的に存在しており,それぞれの利用で規制のあり方が異なっているということ,第2に,水田のような私有地さえも,ある条件下では共同利用空間になるということ,第3に,共同利用の規範には,制裁的なものから,楽しみとしての利用を肯定するようなものまで存在するということである。