著者
川谷 充郎 小林 義和 野村 泰稔
出版者
神戸大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2002

1.橋梁交通振動のアクティブ制御による制振効果の確認研究代表者らが開発してきた模型桁,模型車両およびアクティブ制振装置を用いて実験的にアクティブ制御の制御効果を示すとともに模型実験で用いられた制御理論を用いて理論解析を行い,実験結果との比較を行った。解析で用いる制御理論は出力フィードバック制御とロバスト安定性が高いと思われるH∞最適制御理論とした.そして実橋に対するアクティブ制御の制振効果を理論的に確認するために,阪神高速道路梅田入路橋の応答データに基づき,曲げ振動だけではなく曲げとねじり連成振動に対しても制御を行い,出力フィードバック制御とH∞最適制御理論との制振効果の比較を行った.結果として,H∞最適制御理論による橋梁交通振動の動的応答解析結果から,曲げ振動および曲げとねじり連成振動共に制振効果が高いことが分かった.2.歩道橋群集歩行振動のアクティブ制御による制振効果の確認大阪ドーム前歩道橋のうち最も揺れやすいと報告されている,支間長30.19m,幅員3.4mの区間を対象として現地歩行振動実験を行い,振動応答結果に基づき歩行外力モデルを検討するとともに,歩行者の振動感覚アンケート調査を行った.さらに,単独共振歩行および群集歩行に起因する振動の低減化対策について解析的に検討した.結果としてTMDは単独共振歩行に対しては効果的であるが,群集歩行時には共振成分以外の振動はあまり低減されず,振動を感じることがわかった.アクティブ制御においては,最適レギュレータ理論,H∞制御およびファジィ制御を適用したが,全ての制御理論において制振効果が高く,歩道橋に対しても,その有用性が確認された.各制御理論の比較から,H∞制御が最も制振効率が良く,単独・群集歩行時の共振成分以外の様々な振動成分を低減できることが明らかとなった.