著者
高橋 良当 大和田 一博 森 浩子 川越 千恵美 古味 隆子 井上 幸子 平田 幸正
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.34, no.1, pp.23-29, 1991-01-30 (Released:2011-08-10)
参考文献数
12

当センターに入院した既婚女子糖尿病者で, 重症合併症を有さない患者79名に質問紙法調査を行い, 性障害の実態を調べ, 糖尿病病態や心理社会的要因との関連について検討した.その結果, 性欲の低下が38%, 局所湿潤の低下56%, 絶頂感の低下51%, 性交痛39%に認められた.そこで, 局所湿潤と絶頂感と性交痛の障害度を総合判定し, 性障害のない患者群, 軽度障害群, 高度障害群に分け3群間で比較したところ, 高度障害群では性欲や性交回数の低下, 日常生活上のストレス, 糖尿病発症以前から夫婦関係に問題のある患者が有意に多く, 患者は神経質, その夫は社交的な性格が目だった.一方, 年齢, 糖尿病罹病期間, HbAlc値, 糖尿病性合併症の進展度は3群間で有意な差は認められなかった.以上より, 糖尿病女子の4~6割に性障害が認められ, その性障害は糖尿病の病態より, 夫との関係や生活上のストレスなどの心理社会的要因との関連が強く認められた.
著者
宮崎 康 田中 正巳 岡村 ゆか里 川越 千恵美
出版者
一般社団法人 日本糖尿病学会
雑誌
糖尿病 (ISSN:0021437X)
巻号頁・発行日
vol.46, no.9, pp.757-761, 2003-09-30 (Released:2011-03-02)
参考文献数
39
被引用文献数
6

症例は85歳, 女性.2002年6月より口渇・嘔吐が出現, 7月に466mg/dlの高血糖が判明し入院となった.病歴と検査所見から1型糖尿病の急性発症と診断した.検索し得た限り, 本例の1型糖尿病発症年齢 (85歳) は本邦で3番目の高齢である.1997年以降の糖尿病学会誌収載地方会報告等から検索し得た後期高齢 (75歳以上) 発症1型糖尿病22例の検討から次の点が判明した.(1) 圧倒的に女性が多い.(2) 発症様式から急性発症型と緩徐発症型に分かれる.(3) 急性発症型の最高齢は88歳で本例は2番目の高齢である.緩徐発症型の最高齢は92歳である.(4) 抗GAD抗体は急性発症型では陰性ないし低抗体価, 緩徐発症型では高抗体価で, 他の自己免疫疾患併発例が多い.(5) 1型糖尿病発症と関連するとされるHLAのA24, DR4, DR9は両群に認められた.本例には, 最近小児発症1型糖尿病との関係が報告されたDPB1*0201遺伝子が認められたが, 高齢発症との関連は今後の検討課題である.