著者
清村 紀子 鹿嶋 聡子 時吉 佐和子 寺師 榮 有田 孝 伊藤 直子 工藤 二郎
出版者
一般社団法人 日本臨床救急医学会
雑誌
日本臨床救急医学会雑誌 (ISSN:13450581)
巻号頁・発行日
vol.16, no.5, pp.632-642, 2013-10-31 (Released:2013-11-25)
参考文献数
14

本研究は,中学生へのCPR教育の意味を質的に明らかにし,Kolb経験学習理論を基盤に考察することを目的とする。A地域の中学生53人に対し,簡易型キットを用いたCPR教育実施後に「いのちについて考える」をテーマに記載を求めた作文から,意味ある内容を文章単位で抽出し内容分析した。18部の作文から抽出した193のテクストデータから,【いのちと人とのつながり】,【救急医療に対する認識の高まり】,【思春期における成長】,【バイスタンダーCPRを拡大する上での課題】,【中学生のCPRに関する認識と認知度の実態】の5カテゴリを抽出した。中学生はCPR教育をきっかけとし,知識・技術の習得のみならず,救急医療の現状の課題への理解やバイスタンダーとなることを現実的に実感することに加え,いのちや人とのつながりについて深慮しており,中学生へのCPR教育がいのちの教育や成長発達に意義あることが示唆された。
著者
工藤 二郎 自見 庄三郎 大久保 英雄 柳瀬 敏幸 迫 良治
出版者
一般社団法人 日本内科学会
雑誌
日本内科学会雑誌 (ISSN:00215384)
巻号頁・発行日
vol.70, no.5, pp.740-745, 1981-05-10 (Released:2008-06-12)
参考文献数
20

症例はIgA欠損症にSLEを発症したもので, SLE発症から9年間の長期にわたり,臨床経過を観察したものである. IgA欠損症に関しては, in vitroの実験系においてリンパ球の免疫グロブリン産生能を測定し,本症例にみられるIgA欠損は抑制性T細胞の機能亢進によるものであると推定した.症例は29才の女性. 20才の時,長時間日光に被曝した後,発熱,関節痛が生じ,検査所見ではRA(+),血沈亢進がみとめられたが,同時にlgA欠損も証明された.慢性関節リウマチの診断の下にステロイドの小量投与療法が行なわれたが,ステロイドの減量に伴つて,発熱,発疹,髄膜炎様の症状が出現した.これらの多彩な症状はステロイドの増量によつて消失した.その後9年間,年1回の検査を行なつて観察をつづけたが, RA (+), IgA欠損以外に異常を認めず,臨床的にも全く無症状に経過した. 29才の夏,日光に被曝後,急性増悪を来して再入院した.再入院時にはANF陽性, LE細胞の出現からSLEと診断され, 9年前の初回入院時の多彩な臨床症状も, SLEによるものであつたと推定された.寛解期にあつた時にリンパ球のlgA産生能をin vitroの系で測定したが, IgA産生障害が証明され,しかも患者のT細胞は正常人のB細胞のIgA産生を抑制するとの成績が得られた.この抑制T細胞の機能亢進はSLE発症の前から存在していたものと推定される.