- 著者
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工藤 安代
- 出版者
- 環境芸術学会
- 雑誌
- 環境芸術 : 環境芸術学会論文集
- 巻号頁・発行日
- no.1, pp.5-12, 2001-12-25
この小論は,現代パブリックアートにおけるメモリアルの担う役割が変容している事について論じる。最初に,ロダンがカレー市のために制作したメモリアルについて言及し,メモリアルにおける近代的思考の始まりをその作品を通して検証する。ロダンの『カレーの市民』は,政治的,そして権威的に歴史を賞賛し単一的価値を教化するものとして存在した中世におけるメモリアルのコンセプトを明確に否定した出発点として捉えられる。次に2人の現代若手アーティストによる重要なメモリアルについて,それをめぐる論争に焦点を絞り分析する。マヤ・リンによる『ベトナム・ベテランズ・メモリアル』とレイチェル・ホワイトリードのウィーン市における『ホロコースト・メモリアル』に関して,その立地場所やアーティストが選ばれた経緯,そして建設における一連の賛否両論の討議から検証する。最後に,両作品に纏わる論争を分析し,両者の共通点と相違点を考察する。さらにこの小論において,いかなるメモリアルが現代社会において可能であるか検討し,また社会的価値を持つことができるか検証することを試みる。