著者
工藤 安代
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.27-37, 2006

1930年代のニューディール芸術文化政策は、現代米国社会の文化政策の基盤となっていると言える。ニューディールの芸術政策は2つの性格を持っており、一つは国民の芸術享受の機会を創出し、大不況のなかで芸術家を救済するという社会福祉的視点であり、二つ目は国家の芸術レベルを向上させ精神的アイデンティティを構築していく国家の文化向上政策の視点である。後者の担い手となったのは財務省の管轄下で実施された「セクション」である。ニューディール芸術政策は、第二次大戦と共に中断されるが、セクションの思想は1962年に設立した「米国公共施設管理庁 (GSA)」によるパブリックアート政策に引き継がれる。本稿はまず、ニューディール芸術政策の目的と各プログラムの特色を概観した後、「セクション」の政策に的を絞り、プログラムの目的、作品選定の手順・評価方法等の特性を考察する。その上で「セクション」の思想が現代パブリックアート政策の基礎を形成したことを論じる。
著者
瞿 芳馨 池田 真利子
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.10-22, 2023-03-31 (Released:2023-03-31)
参考文献数
27

本稿の目的は、金沢市民芸術村を対象に施設での活動および市民ディレクターの実態を分析することにより、その現状および課題を解明する。金沢市民芸術村は地域内部での文化交流のための創造の場として形成され、市民ディレクターは工房の活性化に重要な役割を果たす存在である。しかし,創造の場の持続にあたり、管理者側の役割不足、ディレクターの力の限界と、内部空間の分断、外部ネットワークの欠如など問題が明らかになった。
著者
江上 美幸
出版者
文化経済学会〈日本〉
雑誌
文化経済学 (ISSN:13441442)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.20-33, 2022-03-31 (Released:2022-04-19)
参考文献数
35

日本のファッション市場が縮小する中、日本政府がファッションを含んだクリエイティブ産業推進のためにクールジャパン機構を設立してから10余年が経過した。これらを考慮し、グローバルな視座でファッションビジネスを捉える上で、最大の海外販売対象である中国市場において、いかに日本のファッションが受容されているのか、日本のファッションのイメージとブランド認知の特徴を、競合する韓国と比較しながら明らかにした。