著者
三國 久美 工藤 禎子 深山 智代 広瀬 たい子 桑原 ゆみ 篠木 絵理
出版者
北海道医療大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
1999

本研究の目的は、乳幼児を持つ両親を対象として育児ストレスを縦断的に測定し、1)子どもの月齢に伴う親の育児ストレスの変化、2)父母の育児ストレスの違い、3)育児ストレスに関連する家族特性について明らかにすることであった。育児ストレスの測定には日本版Parenting Stress Index (PSI)を用いた。日本版PSIは、奈良間ら(1999)により開発された尺度であり、高得点は高ストレスを意味する。子どもが4ヶ月の時点で縦断研究を開始し、3歳6ヶ月まで約6ヶ月毎に計7回の自記式質問紙による調査を行った。全調査で有効回答を得た父112人、母174人を分析対象者とした統計的解析により、以下の結果を得た。1)日本版PSI総得点は子どもの月齢による差がみられ、父では4ヶ月、10ヶ月と増加し、1歳6ヶ月時が最も高く、以降減少した。母では4ヶ月時が最も低く、10ヶ月から1歳6ヶ月にかけて増加し、その後の変化はみられなかった。2)日本版PSI総得点は、父母間で差がみられ、4ヶ月から3歳6ヶ月まで常に父よりも母の育児ストレスが高かった。また、4ヶ月から3歳6ヶ月までの父母の日本版PSI総得点には有意な正相関が認められた。3)日本版PSIと家族特性との関連をみたところ、子どもの出生順位では第二子以降よりも第一子のほうが、また子どもの健康状態では良好なものよりも治療中のもののほうが、父母ともに有意に育児ストレスが高かった。また、有職の母よりも無職の母の育児ストレスが有意に高かった。父の学歴では、中学卒のものはそうでないものよりも母の育児ストレスが有意に高かった。以上の結果から、子どもの月齢、出生順位、健康状態、また母の職業の有無など育児ストレスに関連する要因を踏まえて両親への育児支援を行う必要性が示唆された。
著者
澤崎 博次 信太 隆夫 池本 秀雄 米田 良蔵 工藤 禎 田村 静夫
出版者
日本医真菌学会
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.91-131, 1979

肺アスペルギルス症に就ては過去数回にわたりシンポジウムが持たれている. 今回のパネルディスカッションは従来触れていなかつた点を補い, 臨床に重きをおき, 関連する基礎的な面も検討した.<br>演者は肺アスペルギルス症の臨床に経験の深い方々ばかりである.<br>先づ全国的な剖検例の調査から見てアスペルギルス症は逐年増加の傾向にあることが確認された.<br>(1) 臨床像の現況 (a) 最近見られる様になつたアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の診断基準, IgEの高値, central bronchiectasis, 栓子, 気管支発作誘発反応などの詳細に触れた. (b) 菌球型については結核に続発することが多いので結核病院の患者を対象とする調査で入院患者の2%前後の出現で, 非定型的な菌球例も多く, レ線像の変化も多彩であり, 結核空洞の他に硬化病巣部位からも菌球が発生する. また人工気胸, 胸膜炎, 肺切除術後に発生するものが多い. 危険な予後は少いが喀血死がある. (c) 肺炎型は殆んど剖検例で, 白血病などに合併するものが多い. 発病に白血球数の低下が関係する. 抗真菌剤で延命効果が期待出来るので早期診断の立場から菌の発見が重要である.<br>(2) 診断 Ouchterlony 法による血清沈降反応 (寒天ゲル内二重拡散法), 補体結合反応, counterimmuno electrophoresis, 間接 (受身) 赤血球凝集反応等を菌球例の多数例に行い, 高率な陽性成績を得ているので診断法として有用である. 諸種抗原の比較検討も行われた.<br>(3) 菌球型等の免疫能菌球型の細胞性ないし体液性免疫能の程度を検索すると, T細胞の機能低下があり, 体液性では免疫グロブリン値は全例として正常か若干増加の傾向にある. 対照とした結核症でもやや似た傾向が見られた. 基礎疾患として一番多い造血器腫瘍などではT細胞比率のみならず機能の著しい低下もあり, 二次感染の成立に極めて有利な条件となつているのが判明した.<br>(4) 治療及び予後巨大菌球例に対してカテーテルによる5-FCの空洞内注入療法の成功例と, 内科治療に抵抗した多発菌球例に対する空洞切開術の成功例が示された.<br>(5) 病理切除肺について, 菌球よりは空洞壁ないしは周囲肺組織に注意を払つて検索を進めた. 空洞の中枢部は軟骨を有する比較的太い気管支であり, 末梢は肋膜に接する, 即ち空洞はかなり大きい肺実質の欠損である. また空洞の側壁と末梢にも気管支が開口していて気管支の壊死, 化膿性炎が変化の主体である. 内腔にはしばしば真菌が存在する. 稀に気管支内腔に真菌を容れた閉塞性肉芽腫性病変が見られる. 次いでアレルギー性気管支肺アスペルギルス症例の理解に役立つ mucoid impaction の症例が紹介された. 中枢部気管支の拡張とその内容たる少数のアスペルギルスが示された.<br>最後にまとめとして次の想定が提出された. 菌球型の発生には一次性と云わず, 結核症に続発する二次性と云わず, 免疫能その他の抵抗性の低下につけ込んで感染が成立し, アレルギー反応としてI型ないしはIII型, IV型の反応が起り, 中枢部気管支の壁が破壊され, 病変は肺実質に波及し, 比較的広範囲の欠損, 空洞となり, 菌糸は中枢部から発育増大をおこして空洞内を充たす. 一方肺組織の反応はIII型ないしはIV型の形をとるのではないか. 空洞性病変に続発するものもこれに準ずるものであろう. 造血臓器疾患に続発する「ア」症は全くカテゴリーの違う無反応性のものと考えるべきではないか. いづれもいくつかの事実の総合の上に組み立てられた仮説であるが, 今後はその細目を検討して行くべき筋合のものであろう.
著者
澤田 あずさ 明野 聖子 吉森 友香 工藤 禎子 サワダ アズサ アケノ セイコ ヨシモリ ユウカ クドウ ヨシコ Azusa SAWADA Seiko AKENO Yuuka YOSHIMORI Yoshiko KUDO
雑誌
北海道医療大学看護福祉学部学会誌 = Journal of School of Nursing and Social Services, Health Sciences University of Hokkaido
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.13-21, 2009-03-31

母親の肯定的な感情を支持する支援のための基礎資料を得ることをねらいに,1歳6ヵ月児の父親の労働時間・育児参加時間からみた母親の育児幸福感を明らかにすることを目的とした.対象は1歳6ヵ月児健診を受診した母親である.健診時に,説明と同意のうえ,母親の育児幸福感(清水ら,2006)と父親の労働時間・育児参加時間に関するアンケートを配布し,郵送法で回収した.全122人に配布し,59件の有効回答を得た.分析は単純集計の後,両親・子ども・父親の労働時間などの各変数ごとに母親の育児幸福感尺度の平均点を算出した.その結果,父親の帰宅時間は20~21時が42.4%であった.父親の過の労働時間は平均59.2±15.0時間であり,50時間以下が33.9%であった.父親の育児参加時間は,平日は1~2時間が40.7%と多く,ほとんどなしが全体の4分の1を占め,休日は半日ぐらいが55.9%と多かった.父親に子どもを任せて母親が外出できる時間は,ほとんどなしが54.2%であった.両親・子ども・家族の特性別及び父親の労働時間・帰宅時間・育児参加時間別にみた母親の育児幸福感得点に有意な差はみられなかった.父親に任せて母親が1人で外出できる時間において,「ほとんどなし」または「半日以上」の場合に母親の育児幸福感は高く,「1~2時間」の場合に育児幸福感は低く,有意な差がみられた.The present study was conducted in order to clarify correlations between child care happiness of mothers whose children was 1 year and 6 months old and fathers' working and child care hours. Questionnaires were handed to 122 mothers who came to health check at the health center of A city. Analysis was performed on valid responses obtained from 59 individuals. From the analysis of correlations between child care happiness of mothers and fathers' working and child care hours, the following results were obtained. Forty two percent of fathers return to home at 20 ~ 21 o'clock. Mean of working hours of fathers were 59.2±15.0. Forty percent of fathers spend on 1~2 hours for child care on weekday, and 55.9% spend with children on half of day on weekend. There were no correlations between characteristic of parents, working and child care hours of fathers and child care happiness of mothers. Child care happiness of Mothers who could not go out and who could go out among half of day were higher than who could go out about 1~2 hours.