著者
岩田 和夫 松田 明
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.3, no.2, pp.56-60, 1962 (Released:2009-12-21)
参考文献数
12
被引用文献数
1 1

The redox potentials of Candida albicans and Candida tropicalis were measured in single culture and in mixed culture with one or two species of various bacteria in respect to the change of pH value of the broth and growth of these Candida species in the final stage of 18 hour-cultivation.The Eh values of these two Candida species were considerably lower than those of the bacteria tested in single culture except with a few species and by mixing culture of the bacteria were significantly lowered in most of the combinations.The pH values of the Candida species were, on the contrary, higher than those of most of the bacteria in single culture and by mixing culture of the, bacteria were raised in many combinations but lowered in a few.The living cells of the Candida species were considerably smaller in numbers in mixed culture than in single one.The grade of the effects described above was, more or less, different between the two Candida species and also among the species of bacteria.The significance of redox potential value of Candida in connection with bacteria in establishment of Candida infections was also discussed from the ecological points of view.
著者
西村 和子
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.122-131, 1982-08-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
36
被引用文献数
1 1

病原性黒色酵母 Exophiala jeanselmei, E. gougerotii, E. dermatitidis および E. spinifera の分生子形成法を走査電顕を用いて検索し, Phialophora richardsiae. P. parasitica および P. repens のそれと比較検討した. Exophiala の前3菌種の分生子形成法はほぼ同じで, 分生子形成細胞先端に生じた1ないし数個の小突起より分生子が連続的求基的に産生されていた. 小突起は少しずつ伸びながら分生子を産生し, その壁には分生子が離れる度にレースの縁飾り状の環紋が形成されていた. 菌糸側壁においても同様の機序で分生子が産生され, 環紋が形成されていた. E. spinifera の分生子形成も同様であつたが, 小突起は分生子形成細胞あるいは菌糸側壁に1個ずつ生じ,長く多数の環紋が認められるのが特徴であつた. これら Exophiala の分生子形成法は Phialophora のそれとは明らかに異なつていた. E. jeanselmei, E. gougerotii は共に37℃における発育が抑制され, 生物学的性状においても差は認められなかつた. E. dermatitidis は37℃にて良好に発育し, KNO3資化能が劣つている点で前2菌種と異なつていた. Exophiala 4菌種はウレアーゼ陽性, GC含量は50~60%であつた. 分生子形成法に関する所見および生物学的性状, GC含量の結果から, Exophiala と担子菌酵母との関連性が示唆された.
著者
本房 昭三 古賀 哲也 山野 龍文 占部 治邦
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.152-158, 1985-09-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
19
被引用文献数
2 2

スポロトリコーシスと黒色真菌感染症の治療現況を報告するとともに, これらの疾患にたいする抗真菌剤の適応について述べた. スポロトリコーシスの治療としてはヨウ化カリウム (KI) の投与あるいは温熱療法が一般的であり, また使用さるべき治療法である. Flucytosine (5-FC) とケトコナゾールは数例において有効であったと報告されており, KIあるいは温熱療法が奏効しない場合には有用であるかも知れない. 黒色真菌感染症の治療としては, 病変が皮膚に限局され, かつ広範囲でない場合には外科的切除が first choice である. 現時点で黒色真菌感染症にもっとも有効な薬剤は5-FCであり, リンパ節転移などの内臓病変を有する場合, 広範囲の病変を有する場合には5-FC, あるいは5-FCとアムホテリシンB点滴静注の併用が推奨される.KIの作用機序についても検討を行なったが, KI投与後血中にヨウ素 (I2) を検出することは出来なかった. しかしヨウ化物イオン (I-) は30~60ppmの濃度に達した. In vitro の実験ではKI(1×10-4M)+H2O2(5×10-5M)+peroxidase, KI+H2O2+Fe++の条件下で Sporothrix schenckii の酵母形は5分後に完全に殺菌された. KI+I2(5×10-6M) の条件下でも5分後にはほぼ完全な殺菌効果がみられた. KI+H2O2 の条件下では120分後に完全な殺菌効果が認められた.また3×10-4MのKIと5×10-5MのH2O2の存在下では2×10-6M程度のI2が産生された. これらの結果から, peroxidase-iodide-H2O2 system, iron-H2O2-iodide system に加えてKIから酸化されて生じたI2が直接殺菌作用を示すためにスポロトリコーシスにおいてKIが特異的に奏効するのではないかと考えた.
著者
松田 和子
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.27, no.2, pp.100-106, 1986-08-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
21
被引用文献数
1 2

Candida albicans の産生する角質溶解性タンパク分解酵素CAPP (旧名KPsae) は pepstatin によって特異的に阻害されるカルボキシール・プロテアーゼで, その至適pHは4.0である. しかし, CAPPは中性或いはアルカリ性の条件下ではその酵素活性を発揮できないことから, in vivo に於いてCAPPが C. albicans の増殖に本当に役立っているかを知る目的で以下の実験を角質培地を使って行なった. (1) 各種緩衝液を用いて培地内のpHを固定してその各種pH下における C. albicans の増殖性を比較検討した. その結果, 菌の増殖はpH3.0, 4.0, 5.0の弱酸性で認められ, 特にCAPPの至適pHであるpH4.0で最も良好であった. 一方, 至適pHより中性よりの条件即ちpH6.0, 7.0の培地では菌の増殖は認められなかった. (2) 培地pHを緩衝作用の弱いもので一時的に調整し, C. albicans によって自律的に培地内のpHが変化できるようにした. すると培養開始時のpHは, 経日的にCAPPの至適pH4.0付近に集束していった. しかもそのpH4.0への集束に従ってCAPPの活性は次第に増加し始め, それにつれて C. albicans の菌数の増加が観察された.以上より, C. albicans は角質培地において自己の増殖に都合のよい条件 (pH) へと環境を変化させる能力があり, 次いで有力な武器であるCAPPを発動させつつ角質を分解し, 菌数を増加させていくものと考えられた.
著者
諸角 聖
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.172-180, 1978-08-07 (Released:2009-12-18)
参考文献数
47

シナモン粉末から抗真菌活性物質の単離を試み, 強い抗真菌活性を有する orthomethoxycinnamaldehyde を得た. 本物質はC10H10O2, 分子量162, 熱に安定, 水に難溶で多くの有機溶媒に易溶な淡黄色薄片状結晶である. また, 本物質は供試した4菌種の mycotoxin 産生菌の発育を100-200μg/mlの濃度で完全に阻止し, 各菌の毒素産生を6.25-50μg/mlで90%以上阻害した. さらにこの物質は Microsporum canis を始めとする5種の皮膚糸状菌に対して強い抗菌活性 (MIC;3.12-6.25μg/ml) を示した. しかし抗細菌作用は50μg/mlの濃度でも発現しなかつた.
著者
呂 耀卿
出版者
日本医真菌学会
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.24-31, 1987 (Released:2009-12-21)
著者
上野 明 松崎 悦子 百木 克夫 斉藤 伍作 酒井 純雄
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.6, no.2, pp.109-114, 1965-06-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
4
被引用文献数
1 1

11-jodo-10-undecynoic acid (K-4172) was synthesised in our laboratory from 10-undecynoic acid reacting with iodine in presence of alkaline hydroxide. Fungistatic and bacteriostatic activities of K-4172 were examined. It showed significant antifungal activities, especially against Trichophytons and Crytococcus neoformans, but it had weak antibacterial activities.In in vivo test by experimental trichophytosis on guineapigs, it showed also significant therapeutic activities at the concentration of 0.5% in alcohol solution. It is very interest that in the in vivo test 0.5% tincture of K-4172 was more effective when it was applied in combination with 10% of 2, 4, 6-tribromophenyl caproate.Interperitoneal and oral LD50 of K-4172 dissolved in olive oil were 132 and 225mg/Kg respectively and intraperitoneal LD50 of its sodium salt was 134mg/Kg. Chronic toxicity test of K-4172 on mice and rat showed both almost no side effect when it was admidistrated intraperitoneally and orally. The authers persume from these data that K-4172 is safely available for treatment of human trichophytosis.
著者
倉田 浩
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.19, no.2, pp.89-93, 1978-08-07 (Released:2009-12-18)
参考文献数
19

ヒトおよび動物の藻菌類 Phycomycetes に属する真菌が原因する感染症を総称して, いわゆるムコール症と呼んでいたが, 実際には, Mucorales ケカビ目に所属する真菌だけが真菌症を起すのみでなく, Entomophthorales ハエカビ目に属する Basidiobolus, Conidiobolus 属菌らに原因する疾患も, 極めて僅かな例ではあるが知れているので, ムコール症は, Mucor, Absidia, Rhizopus, Mortierella 属らのケカビ目による疾患にのみ適用することにし, 若し, ケカビ目とハエカビ目の両者による疾患を併せてよぶ必要がある場合は, Ajello らの提案する zygomycoses 接合菌症を使用するのが適当と考えられる.近年, Alexopoulos 以来, 従来用いられてきた Phycomycetes なる名称がなくなり, 最近では, Mastigomycotina 鞭毛菌類, Zygomycotina 接合菌類の2つの亜門 sub-division がこれに変つてしまつた. しかし, 旧 Phycomycetes に属するすべての真菌による疾病を総括する必要のある時の呼称は, これに変わるべき適当な用語がないことから, Emmons らが言う The Phycomycoses 藻菌症を, そのまま残して使用することにしてはどうかと提案する. 次いで, 現在までに種々の異名でよばれるケカビ目に属する病原真菌を同義語の立場から整理を試みたので, 表示し参考に供した.
著者
澤崎 博次 信太 隆夫 池本 秀雄 米田 良蔵 工藤 禎 田村 静夫
出版者
日本医真菌学会
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.20, no.2, pp.91-131, 1979

肺アスペルギルス症に就ては過去数回にわたりシンポジウムが持たれている. 今回のパネルディスカッションは従来触れていなかつた点を補い, 臨床に重きをおき, 関連する基礎的な面も検討した.<br>演者は肺アスペルギルス症の臨床に経験の深い方々ばかりである.<br>先づ全国的な剖検例の調査から見てアスペルギルス症は逐年増加の傾向にあることが確認された.<br>(1) 臨床像の現況 (a) 最近見られる様になつたアレルギー性気管支肺アスペルギルス症の診断基準, IgEの高値, central bronchiectasis, 栓子, 気管支発作誘発反応などの詳細に触れた. (b) 菌球型については結核に続発することが多いので結核病院の患者を対象とする調査で入院患者の2%前後の出現で, 非定型的な菌球例も多く, レ線像の変化も多彩であり, 結核空洞の他に硬化病巣部位からも菌球が発生する. また人工気胸, 胸膜炎, 肺切除術後に発生するものが多い. 危険な予後は少いが喀血死がある. (c) 肺炎型は殆んど剖検例で, 白血病などに合併するものが多い. 発病に白血球数の低下が関係する. 抗真菌剤で延命効果が期待出来るので早期診断の立場から菌の発見が重要である.<br>(2) 診断 Ouchterlony 法による血清沈降反応 (寒天ゲル内二重拡散法), 補体結合反応, counterimmuno electrophoresis, 間接 (受身) 赤血球凝集反応等を菌球例の多数例に行い, 高率な陽性成績を得ているので診断法として有用である. 諸種抗原の比較検討も行われた.<br>(3) 菌球型等の免疫能菌球型の細胞性ないし体液性免疫能の程度を検索すると, T細胞の機能低下があり, 体液性では免疫グロブリン値は全例として正常か若干増加の傾向にある. 対照とした結核症でもやや似た傾向が見られた. 基礎疾患として一番多い造血器腫瘍などではT細胞比率のみならず機能の著しい低下もあり, 二次感染の成立に極めて有利な条件となつているのが判明した.<br>(4) 治療及び予後巨大菌球例に対してカテーテルによる5-FCの空洞内注入療法の成功例と, 内科治療に抵抗した多発菌球例に対する空洞切開術の成功例が示された.<br>(5) 病理切除肺について, 菌球よりは空洞壁ないしは周囲肺組織に注意を払つて検索を進めた. 空洞の中枢部は軟骨を有する比較的太い気管支であり, 末梢は肋膜に接する, 即ち空洞はかなり大きい肺実質の欠損である. また空洞の側壁と末梢にも気管支が開口していて気管支の壊死, 化膿性炎が変化の主体である. 内腔にはしばしば真菌が存在する. 稀に気管支内腔に真菌を容れた閉塞性肉芽腫性病変が見られる. 次いでアレルギー性気管支肺アスペルギルス症例の理解に役立つ mucoid impaction の症例が紹介された. 中枢部気管支の拡張とその内容たる少数のアスペルギルスが示された.<br>最後にまとめとして次の想定が提出された. 菌球型の発生には一次性と云わず, 結核症に続発する二次性と云わず, 免疫能その他の抵抗性の低下につけ込んで感染が成立し, アレルギー反応としてI型ないしはIII型, IV型の反応が起り, 中枢部気管支の壁が破壊され, 病変は肺実質に波及し, 比較的広範囲の欠損, 空洞となり, 菌糸は中枢部から発育増大をおこして空洞内を充たす. 一方肺組織の反応はIII型ないしはIV型の形をとるのではないか. 空洞性病変に続発するものもこれに準ずるものであろう. 造血臓器疾患に続発する「ア」症は全くカテゴリーの違う無反応性のものと考えるべきではないか. いづれもいくつかの事実の総合の上に組み立てられた仮説であるが, 今後はその細目を検討して行くべき筋合のものであろう.
著者
阿部 美知子 久米 光 奥平 雅彦
出版者
日本医真菌学会
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.26, no.4, pp.289-295, 1985
被引用文献数
1

真菌症の免疫血清学的検査の診断学的有用性について臨床材料652検体および健康者88検体の合計740検体を供試材料として, counterimmunoelectrophoresis (以下CIE), passive haemagglutination (以下PHA) および latex agglutination test (以下LA) の三法で比較検討した.<br>臨床的および病理組織学的にカンジダ症が確認された66例中, CIEによる抗カンジダ抗体陽性率は48.5%およびPHA37.9%で, 病型別には内臓カンジダ症の陽性率が高かった.<br>同様にアスペルギルス症が確認された39例中, CIEによる抗アスペギルス抗体陽性率は38.5%およびPHA 77.3%であった.<br>クリプトコックス症11例のCIEによる血清中抗クリプトコックス抗体陽性率は30.0%, 同様に抗原陽性率50.0%で, 髄液中の抗体陽性率は0%, 同様に抗原陽性率は62.5%であった. また, LAによる抗原検出率は血清および髄液ともに100%で, クリプトコックス症では抗原検索の有用性が示唆された.<br>なお,内因性の感染症であるカンジダ症の診断では, 確定しえなかった症例でも臨床材料より頻回に大量のカンジダが分離される症例では高頻度にカンジダ抗体の検出をみた. このことは検索成績の評価に充分な配慮が必要であることを示唆するものである.
著者
久米 光 村瀬 勢津子 望月 真弓
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.26, no.3, pp.126-132, 1985-09-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
11
被引用文献数
1 1

内臓真菌症の治療薬として現在最も広く用いられている amphotericin B (AMPH) と flucytosine (5-FC) との併用効果については今尚釈然としない. そこで我々は両剤の併用効果の有無およびその程度を確認するとともに, 併用効果の発現の機作を明らかにすべく一連の検索を行なった.チェッカーボード法による両剤の併用効果は, いずれも combined action index は20以上で両剤の間に極めて強い協力作用が認められた. また, 感染治療実験においても累積死亡率および病理組織学的検索成績の両者で評価した結果, 明らかに両剤の間に併用効果がある事が確認された.そこで, 高速液体クロマトグラフィーを用いて両剤の分別定量法を確立するとともに, 本法によって諸種の濃度AMPHが混在する培養系における供試菌菌体内への5-FCの取り込み量を比較検討した. また, 両剤併用時における5-FCのラット体内動態を単独投与群との比較において検討し, 従来基礎的に明らかではなかったAMPHと5-FCとの併用効果の重要な機作の1つとしてAMPHが, 5-FCの吸収, 排泄および臓器内移行濃度に何等の影響を及ぼすことなく, 菌体内への5-FCの取り込みを促進するのであろうことを示唆する成績を示した.
著者
東 禹彦
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.18, no.3, pp.199-206, 1977-11-06 (Released:2009-12-18)
参考文献数
33
被引用文献数
1
著者
今村 宏 平谷 民雄 内田 勝久 山口 英世
出版者
日本医真菌学会
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.29, no.4, pp.275-291, 1988

ピリミジン基を含む新しい3-ヨードプロパルギル誘導体である rimoprogin の <i>in vitro</i> 抗菌活性を同じ3-ヨードプロパルギル誘導体に属する既存の抗真菌剤 haloprogin およびイミダゾール系抗真菌剤として知られている isoconazole nitrate を対照薬剤として比較検討した結果, 以下の知見が得られた.<br>1) 本剤は広い抗菌スペクトルを有し, 酵母状真菌, 皮膚糸状菌, <i>Aspergillus</i> および類縁菌, 接合菌, 二形性真菌および黒色真菌を含むほとんどすべての病原性真菌に対してのみならず, グラム陽性細菌に対しても低濃度で発育阻止効果を示した. これらの菌群間で本剤に対する感受性を比較すると, 二形性真菌が最も高く, 次いで皮膚糸状菌, <i>Aspergillus</i> および類縁菌, 黒色真菌, 酵母状真菌, 接合菌の順であった.<br>2) 各種真菌に対する本剤の最小発育阻止濃度 (MIC) は接種菌量および培養時間により, 軽度しか影響を受けなかったが, 培地pHによる影響は顕著にみられ, 酸性側で高い抗菌活性を示した. また血清の添加により抗菌活性は低下したが, その程度は対照薬剤に比べて軽度であった.<br>3) <i>Candida albicans</i> および <i>Trichophyton mentagrophytes</i> を rimoprogin 存在下で培養した場合, 2.5μg/ml以上の薬剤濃度では6時間以内に明らかな生菌数の低下が認められ, 本剤が感受性菌に対して殺菌的に働くことが示唆された.
著者
友田 恒典 中野 康夫 陰山 克
出版者
The Japanese Society for Medical Mycology
雑誌
真菌と真菌症 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.356-358, 1983-12-20 (Released:2009-12-18)
参考文献数
10
被引用文献数
7 9

白血病治療中の感染症は注意すべき合併症の一つでありその原因菌は上気道, および腸内の常在菌や Candida が考えられている. 本報告では白血病治療患者の腸内 Candida の増殖を知るため糞便中の Candida 量を検討した. 白血病治療患者 (2ヵ月以上治療例) 56例中29例において糞便1g中に Candida が104以上認められた. Candida の種類は Candida albicans Aが半数を占め, ついで Candida tropicalis であつた. また乳酸菌含有牛乳投与による糞便中 Candida の変動を検した. 糞便中1g中に Candida が105以上認められたものの中, 牛乳飲用可能な16例について, 乳酸菌含有牛乳投与の影響をみたが16例中8例が104以下に減少した. すなわち乳酸菌含有牛乳投与により糞便中の Candida 量の減少が認められた.
著者
生冨 公明 西川 武二 中山 秀夫
出版者
日本医真菌学会
雑誌
日本医真菌学会雑誌 (ISSN:05830516)
巻号頁・発行日
vol.21, no.3, pp.184-187, 1980
被引用文献数
1

著者らは最近, <i>Microsporum audouinii</i> によるケルズス禿瘡の6歳外国人男子例 (スーダン国籍) を経験した. 患者は大使館員家族で, 原因菌は外国由来と考えられた. 本邦報告例を検討したがいずれも菌学的記載に乏しく, 著者らの例が <i>Microsporum audouinii</i> によるケルズス禿瘡の本邦第1例と考えた.