著者
市原 靖子 Carlos A. Ibarra Moreno 菊地 博達
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.26, no.2, pp.215-224, 2006 (Released:2006-03-29)
参考文献数
51
被引用文献数
1 1

悪性高熱症は誘発薬などによって骨格筋の異常な代謝亢進が引き起こされる致死的な疾患である. 常染色体優性遺伝をとり, 多くはリアノジン受容体 (RYR1) の遺伝子変異のために起こるといわれている. 一方, セントラルコア病は先天性非進行性ミオパチーの一種である. 臨床症状として重症例は少ないが, 側弯症や四肢の関節拘縮などを有することが多い. セントラルコア病患者の悪性高熱症合併例は以前より報告されていた. またセントラルコア病の遺伝子変異がRYR1領域であることから, セントラルコア病と悪性高熱症は非常に関連深い疾患である. しかし悪性高熱症だからといってセントラルコア病を必ず伴っているわけでもなく, 逆にセントラルコア病だからといって, 確率は低いと思われるが必ずしも悪性高熱症であるわけでもない.
著者
市原 靖子
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.7, pp.760-769, 2018-11-15 (Released:2018-12-26)

悪性高熱症は主に全身麻酔中に突然高熱を発する,常染色体優性遺伝の筋肉疾患である.発症には遺伝素因,抑制因子の欠如,および誘発因子が関与する.本症の特異的な症状はないが,早期発見・早期治療がなされなければ死に至る.この疾患の素因を術前検査から診断することは難しい.日本麻酔科学会では会員が悪性高熱症に対する理解を深め,実践できるよう,悪性高熱症管理ガイドラインを2016年に制定した.本ガイドラインは患者救命を最優先にする必要な処置が記載されている.ただし,ガイドラインでは原則を記載したのみで,本疾患の病態を理解し,現場の状況によって適宜修正する必要はある.