著者
市辺 義章
出版者
北里大学
雑誌
北里医学 (ISSN:03855449)
巻号頁・発行日
vol.23, no.6, pp.424-430, 1993-12-31
被引用文献数
1

アレルギー性結膜炎の近年増加傾向に,種々の生活環境(生体外環境)汚染物質の関与が指摘されてきた。また,HLA抗原と関係したいわゆるアレルギー体質など宿主側の因子も検討されているが,現在までに報告は極めて少ない。我々はアスコルビン酸の抗ヒスタミン作用やフリーラジカルに対する防御作用に注目し,ハートレイ系雄モルモットを用いて実験的アレルギー性結膜炎に対するアスコルビン酸の効果を検討した。アスコルビン酸の投与は大量群,正常群,欠乏群の3群に分けた。モルモットにスギ花粉に対する受動免疫を与え抗原を投与,結膜炎の強度を血管から漏出したEvans blueを分光光度計で測定,定量化した。その結果,スギ花粉の抗原,抗体を投与せず,3群で色素の漏出度を比較したところ有意差はなかったが,抗原,抗体を投与しアレルギー反応を生じさせた場合はアスコルビン酸の投与量が少ない群ほど色素漏出度(アレルギー反応)が強かった。アスコルビン酸の有する抗ヒスタミン作用の低下が主な原因と思われた。またアレルギー性結膜炎の増悪因子である有機燐剤へのアスコルビン酸の防御的効果も検討したが,本実験では明らかな効果は認めなかった。アレルギー性結膜炎の増悪に生体外環境因子のみならずアスコルビン酸の低下など宿主側の正常な生体内環境を乱す因子も重要だと考えた。また臨床上,重度のアレルギー性結膜炎の患者の治療や診断に血中アスコルビン酸レベルにも注目すべきと思われる。